質問のお手紙が届いていますよ。
はいはい。
最近、物を食べると顎が痛くなるので病院にいった所、顎関節症と診断されました。原因は噛み合わせの悪さにあるという事でしたので、現在は歯医者に通っていますが、そこで姿勢の悪い事も原因だと指摘されました。そこで質問なんですが、姿勢と噛み合わせは関係しているのでしょうか。
噛み合わせと姿勢との関係についての質問ですね。
すべてのケースに関係しているわけではありませんが、姿勢とかみ合わせの間に深い関係があるのは事実です。ここでは噛み合わせと姿勢との関係について解説します。
噛み合わせ(顎関節症)と姿勢との関係
この質問者の方のように噛み合わせやアゴの痛みなどで悩んでいる方は意外に多く、私の治療室でも相談を受ける事がよくあります。
特に多いのは、噛み合わせがうまくいかない事によるアゴの痛み、顎関節症(がくかんせつしょう)です。口を開ける時にクリック音がするようになり、顎関節を中心に痛みを発するようになります。
そして姿勢は、このようなアゴの問題に深く関係しています。
何故そう言えるのか解説しましょう。
深く姿勢と関係しているのは「口を開ける」動作です。
口を開ける時に働く筋肉は首の側面と前面から鎖骨方向に付着しています。これらの筋肉が収縮するとアゴは引き下げられ、口は開口状態になります。
上図は、アゴを引き下げる筋肉の収縮方向に示した模式図です。左は正しい姿勢である場合を示していて、青い点で示された顎関節から真下方向に筋肉が収縮している事がわかります。
一方図右は、猫背の場合の筋肉の作用方向に示しています。図を見てわかる通り、背中が丸まると頭は前に突き出た状態になり、頭と首は後ろ斜めの位置関係になっています。すると筋肉の収縮する方向も真下から斜め後ろにずれてしまい、アゴを真下に引き下げる事ができなってしまうのです。
これを理解するには実際にやっているみるのが一番です。まず姿勢を正して口を開けてみて下さい。口は抵抗なく開くはずです。次にハトの頭の動きを真似をする要領で頭を前に突き出してみましょう。この状態で口を開けようとすると、先ほどより顎関節にストレスを感じるはずです。
このように、悪い姿勢になると口を開ける動作がうまく出来なくなります。その結果、顎関節症や噛み合わせがおかしくなってしまう事があるのです。
もう一つの原因、からだのゆがみ
からだの位置関係により噛み合わせに問題を起こす原因は他にもあります。その原因とは「からだのゆがみ」です。
ここで言うからだのゆがみとは、下図のようにからだのバランスが左右どちらかに傾いている状態のことです。
典型的な例を上げると、自分を鏡で見た時、頭が左右どちらか一方に傾いていたり、肩の高さが左右異なっているなどの状態です。心当たりのある方も多いのではないでしょうか。
このようにからだに左右差が生じると、筋肉の働きも左右均一でなくなります。当然アゴを動かす筋肉も例外ではありません。多くの場合、偏った側のアゴばかりで物を噛むようになります。このような事が続けば、当然噛み合わせも悪くなるでしょう。
からだのゆがみは姿勢の悪さに比例して強くなる傾向があります。つまりからだのゆがみの問題の根本には、姿勢の問題が隠されている場合が多いのです。
歯の矯正と姿勢矯正のどちらを優先すべきか
ここまでで噛み合わせや顎関節症は姿勢と深い関係のある事をご理解いただけたと思います。
とは言え、歯並びの悪さなどの直接的な原因抜きで噛み合わせの問題を考えることはできません。ですから問題が疑われたら、まず先に病院で検査をしてもらう必要があるでしょう。
では、歯並びも姿勢も悪い人は、どちらを優先して矯正した方がいいのでしょうか?
あえて優先順位を示すのならば、歯科矯正が先でしょう。しかし可能であるならば、姿勢矯正と歯科矯正を平行して行うのがより理想的です。
姿勢と歯並びは、大本で同じからだの問題である為に相互に関係しあっています。ですからどちらか一方を優先すると、後回しにされた問題が足を引っぱったり、改善したと考えていた問題が後に再発して二度手間になるなどのケースがよくあるからです。
ただ歯科矯正とは異なり姿勢矯正は後からでも帳尻合わせをする事ができます。ですから最初は歯科矯正を行い、その後に姿勢矯正をするのが正しい順番となります。
まとめ
ここまで噛み合わせと姿勢との関係について解説しました。
アゴ以外に噛み合わせの問題で症状が出る場合はあるの?
原因が姿勢であった場合に限ってですが、耳の下付近にするどい痛みを発症する場合もあります。又、片耳だけの耳鳴り・耳閉感が現れる場合もありますね。もし原因不明の耳鳴りで悩んでいる方は、姿勢をチェックしてみるのも良いと思います。
最後にポイントをまとめます。
- 噛み合わせと姿勢との間には深い関係性がある。
- 背中が丸まると、アゴを開ける筋肉がうまく働かなくなり、顎関節にトラブルが発生する。
- 歯並びも悪い場合は歯科矯正を優先する。ただし姿勢矯正と歯科矯正を同時に行うのが理想。