はい、質問のお手紙が届いています。
はいはい。
私には中学生の息子と娘がいます。息子は猫背で姿勢が悪いのですが、注意しても一向に改善しません。一方娘はだらしのない姿勢をしている時もあるのですが、息子ほど姿勢は悪くありません。周りの同級生を見ても悪い姿勢は男の子に多いように思えます。実際、男の子の方が悪い姿勢になりやすいのでしょうか。
男の子の方が悪い姿勢なりやすいのかという質問ですが、実際どうなの?
個人差はありますが、姿勢に男女差は少なからずあります。詳しく解説していきましょう。
女性に比べて男性は悪い姿勢になりやすい?
「男女の姿勢に差はあるのか」という疑問を持って周囲を見てみると、もしかしたら猫背や背中の丸い人は男性の方が多いと感じられるかもしれません。実際、後にお見せする私の治療室の統計データからもそれは事実である事を示しています。
しかし、それは男性の方が悪い姿勢になりやすいという事を示しているわけではありません。実は「なりやすい姿勢の種類」に男女差があるのです。
次に私の治療室の統計データを見てみましょう。
グラフは男女別になりやすい悪い姿勢の種類を示しています。男女ともに正しい姿勢の人が少ないのは、統計データが管理人の治療室によるものだからです(姿勢の良い人はあまり来院されません)。
グラフを見ると、男女で大きな差のあることがわかります。具体的には、男性は「猫背」の割合が大きく(59%)、女性は「胸つき出し姿勢」の割合が大きい(54%)ことがわかります。
一般に悪い姿勢というと猫背だけのように思われていますが、実は悪い姿勢には「猫背」「胸つき出し姿勢」「腰つき出し姿勢」の三つの種類があります。
上図一番左が正しい姿勢、そして続く3つの姿勢が悪い姿勢の三分類です。「猫背」は丸い背中、「腰つき出し姿勢」は反り返った腰、「胸突き出し姿勢」は突き出た胸が特徴です。詳細については以下の記事を参照して下さい。
ここで注目してほしい点は、猫背は一目で悪い姿勢に見えて、胸つき出し姿勢は一見して悪い姿勢に見えない事です。
つまり悪い姿勢の方に男性が多いように見えるのは、猫背が目立つ姿勢だからです。一方女性に多い「胸つき出し姿勢」は一見して悪い姿勢に見えません。その為、女性には悪い姿勢が少ないように思えるのです。
この姿勢の男女差は見た目以外の違いも生み出しています。次は男女別に少し詳しく解説しましょう。
女性のなりやすい姿勢、胸つき出し姿勢
まずは女性からみていきましょう。
上に示した姿勢が女性のなりやすい姿勢、胸を張った状態で固まった姿勢である「胸つき出し姿勢」です。詳しくは以下の記事を参考にしてください。
女性が「胸つき出し姿勢」になりやすい理由は何でしょうか?
一番の理由は、男性に比べて女性の方が見た目に敏感であることが挙げられます。見た目に敏感な方は姿勢を美しく見せようと胸を張る事を意識してしまいがちです。そしてそれが習慣化すると、胸を張った状態のままからだは固まり、「胸つき出し姿勢」になってしまうのです。
「胸を張る事がなんで悪いの?」と思われる方も多いでしょう。確かに見た目には問題はありません。しかし見た目以外の問題があります。それはからだの負担が大きいという問題です。
胸を張った姿勢を維持するには、体を強く緊張させる必要があります。その為にストレスが蓄積して、肩こり、頭痛、腰痛など様々な慢性的な症状に悩まされる原因になるのです。詳しくは下の記事を読んでください。
男性のなりやすい姿勢、猫背姿勢
上図左は男性のなりやすい猫背姿勢を模式的に示した図です。右図の正しい姿勢と比べて見た目で悪い姿勢である事がはっきりとわかります。
男性が猫背になりやすいのは、女性ほど見た目を気にしない為に、だらしない姿勢をする習慣が身に付きやすく、その結果として猫背なってしまう場合が多いからです。
猫背は目立つために他者からの印象の悪い姿勢です。その為、社会生活の面で不利益になりやすい傾向があります。
又、「胸つき出し姿勢」ほどではないですが、身体的な負担も大きく、慢性的な肩こりや腰痛に悩まされる原因にもなります。
姿勢をからだの変形として見ると男女差はほとんどない。
女性のなりやすい「胸つき出し姿勢」と男性のなりやすい「猫背」姿勢には、見た目に大きな差がある為、まったく異なる姿勢であると思われるかもしれません。
しかし姿勢を「からだの変形」としてみれば、実は両者ほとんど同じ姿勢なのです。
そう言える理由を解説していきしまょう。下図は女性のなりやすい「胸つき出し姿勢」です。
上図の赤線は、背中の形を大まかに表しています。赤線を見ると、アルファベットのLの字に類似している事がわかります。つまり、「胸つき出し姿勢」の変形は大まかに「L」字型の変形であると言えます。
一方男性のなりやすい猫背はどうでしょうか。
上図は猫背の背中の形を赤線で示しています。線を見ると猫背の変形は「く」の字型の変形である事がわかります。
「L」と「く」は一見すると異なる形に見えます。しかし、胸突き出し姿勢を少し時計回りに回して、改めて比較してみるとどうでしょうか。
上図左が胸つき出し姿勢を時計回りに少し回転させた図、右が猫背姿勢です。このように角度を変えて見ると、両者が同じ背中の形である事がよくわかると思います。
つまり姿勢をからだの変形として見れば、男女の姿勢はほぼ同じであると言えるのです。
この事実は特に姿勢矯正する時に重要となります。何故なら変形が同じであるなら矯正方法に違いはないからです。
男女別姿勢の注意点
ここまで男女の姿勢差について解説してきました。次は男女別に注意点を解説しておきましょう。
男性の場合は単純です。猫背は見た目ですぐわかりますから、大抵の場合本人も自覚しています。ですから「悪い姿勢をしているな」と気づいたらそれをやめるようする事が重要です。又、すでに変形が進んでいる場合は、できるだけ早く矯正をするのがお勧めです。
問題は女性です。女性のなりやすい「胸つき出し姿勢」は見た目には問題がない為、本人も周囲も気づいていない場合がほとんどです。むしろ服装によっては美しく見える場合も多い為、本人は「自分は姿勢が良い」と思っている場合も少なくありません。
これはメリットのように思えるかもしれませんが、見方を変えれば女性は姿勢の悪い事にいつまでも気づかないというデメリットもあります。
先にも解説したように、胸つき出し姿勢はからだに大きな負担を強いる姿勢です。その為、肩こり・腰痛・頭痛などの慢性症状を抱えている方が多く見られます。
しかし本人は姿勢の悪い事に気づいていない為、いつまでも症状に悩み続ける女性が多くいらっしゃるのです。
女性で「肩こり・腰痛、頭痛」などの慢性症状で悩んでいる方は、胸つき出し姿勢の典型的サインである「鳩胸」「首がまっすぐ(ストレートネック)でいかり肩」「呼吸が浅い」の3つのポイントが当てはまるかどうかチェックしてみましょう。もし2つ以上心当たりがあるならば一度専門家に見てもらうのがお勧めです。
まとめ
以上姿勢の男女差について解説しました。
見た目に目立つ男性も問題だけど、原因わからずに症状に悩まされやすい女性も問題だね。
そうですね。からだの負担という点から、より姿勢に注意が必要なのは女性であると私も考えています。
最後にポイントをまとめます。
- 悪い姿勢のなりやすさに男女差はないが、なりやすい姿勢の種類に差がある。
- 男性は猫背になりやすく、女性は胸つき出し姿勢になりやすい。
- 猫背は目立つので、社会生活上のデメリットが問題。
- 胸つき出し姿勢はからだの負担が大きく腰痛・肩こり・頭痛などの慢性症状に悩まされやすい事が問題。
- 女性は悪い姿勢である事を気づいていない場合が多い。女性で慢性的な症状に悩んでいる方は一度姿勢をチェックされるのがお勧め。