はい、質問のお手紙が届いています。
はいはい。
私は慢性の腰痛持ちです。特に寝起きの腰痛がひどく、朝は腰を伸ばすのに一苦労です。その為、寝具を工夫したり様々なグッズを試してみたりしたのですが、一向に改善しません。そこで質問なのですが、腰痛を防ぐ寝方や姿勢のようなものはないのでしょうか。
寝起きの腰痛についての質問ですね。
腰痛・肩こり・頭痛などの寝起きの痛みは、実は悪い姿勢の方に見られる典型的な症状です。
ここではそうなる理由と対処法を紹介していきましょう。
悪い姿勢になると寝起きに腰痛・肩こりになる。
慢性的な腰痛持ちの方の中には、特に寝起に痛みがひどいという方が多くいらっしゃいます。又、腰痛だけでなく肩こりや頭痛も寝起きの方がひどいという方も同様に多数いらっしゃいます。
原因は色々考えられますが、症状が慢性的なものに関しては、姿勢に原因がある場合が多いと私自身は考えています。
そう言える理由は、猫背の方がそのまま仰向けに寝た状態をイメージするとわかります。
上の図の左は典型的な猫背姿勢の模式図で、それをそのまま仰向けに寝かせたのが右の模式図です。図を見ると、背中が丸くでこぼこである為に、腰と頭が浮いてしまう事わかると思います。
浮いている部分は不安定な状態である為に筋肉は緊張状態です。筋肉が緊張したまま朝まで寝ていれば、寝起きにはそこが痛むようになるのは不思議な事ではありません。
このような事から、寝起きの腰痛・肩こり・頭痛が慢性的である場合、その原因は姿勢にある可能性が高いのです。
寝起きに腰痛になる理由
寝起きの腰痛についてもう少し詳しく解説しておきましょう。
先に解説したように、悪い姿勢の方は背中が凸凹である為に腰が寝具から浮いた状態になります。そしてこのような腰の浮いた状態を「反り腰」と言います。
上図は反り腰の模式図です。左の正常な状態と比べてお腹が前に突き出て腰がわん曲している事がわかります。寝起きの腰痛は、主にこの「そり腰」の変形により引き起こされます。
自分が反り腰かどうか確認するには、足を伸ばして床に仰向けに寝てみましょう。腰だけ床から浮いてしまうようならば、反り腰である可能性は高いと言えます。
このような反り腰の状態になると、腰の筋肉は弓の弦のように緊張した状態になり、寝起きには腰痛になってしまうのです。
又、「反り腰」は腰の関節が締めつけるようにも働きます。締め付けられた関節は炎症状態になり、慢性的な腰痛の一因になっています。
寝起きに肩こり・頭痛になる理由
寝起きの肩こり・頭痛についても少し詳しく解説しましょう。
悪い姿勢になると、大抵は肩から首にかけて丸く変形します。いわゆる猫背の状態です。そして猫背には、必ず「アゴ上がり」の変形が伴います。
上図は猫背の状態から「アゴ上がり」変形になる仕組みを図解したものです。
猫背になると首が前に傾斜する為、目線は必ず下を向いた状態になります(上図左)。当然これでは前を見る事ができないません。そこで前を見る為にアゴを上げるようになる為、猫背には「アゴ上がり」変形が伴うのです(上図右)。
これら猫背と「アゴ上がり」変形にはそれぞれ特定の症状と比例関係にあります。背中の丸まりの程度=肩こりの程度、アゴ上がりの程度=頭痛の程度に比例しているのです。
上図は肩こりと猫背の関係を示したグラフです。縦軸は肩こりを訴える人の比率、横軸は猫背の程度を示していて、右にいくほど猫背の程度が強くなります。グラフを見てわかるように、猫背の程度がひどいほど肩こりを訴える人が増える事がわかると思います。
さらに詳しくは以下の記事で紹介していますので興味のある方はご覧ください。
そしてこの事が寝起きに肩こり・頭痛になりやすい原因でもあります。姿勢の悪い方が仰向けに寝ると「背中の丸まり」か「アゴ上がり変形」のどちらかが強まるからです。
そして肩から首にかけてのストレスの偏りに大きな影響を及ぼしているのが寝具です。特に「枕の高さ」と「布団の硬さ」は影響が大きいと考えています。
上図は、枕の高さによるストレスのかかる部位の違いを示した図です。
まずは左の「枕が高い場合」を見て見ましょう。枕が高いと、背中の丸みが強調されます。その為、寝起きに肩こりになりやすくなります。
一方、右図の枕が低い場合は、浮いた頭を枕が保持でぎずアゴがさらに上がってしまっています。このような状態になると後頭部が締め付けられて、寝起きに首痛、頭痛になりやすくなるのです。又、アゴが上がると気道も圧迫される為に睡眠時無呼吸症を悪化させる場合もあります。
この枕の条件に敷布団の硬さの条件が加わり、ストレスのかかる部位が複雑に変化しています。しかしどちらにしても首から肩のどこかしらにストレスが偏る事に変わりありません。
猫背の方にはまくらをとっかえひっかえするケースが良く見られます。まくらを変えると一時的に楽になるのですが、しばらくすると楽になった部位とは別の部位がつらくなり始めて、又まくらを変える、そんなサイクルを繰り返しすケースが多いのです。
寝起きの腰痛・肩こり・頭痛を予防する三つの方法
ここまで寝起きに腰痛・肩こり・頭痛について解説してきました。次はその予防法を三つ紹介しましょう。それぞれ簡単ですから、是非チャレンジしてみてください。
- 横向きやうつぶせで寝るようにする
- すこし硬めの布団で寝る
- 膝を少し曲げて寝る
横向きやうつぶせで寝るようにする
寝起きの痛みを防ぐ一番簡単な方法は、横向きやうつぶせで寝る事です。横向きやうつぶせならば、悪い姿勢による背中の凸凹は関係しませんから、仰向けに比べて格段にストレスは軽減されます。
しかしそうは言っても、仰向け以外の姿勢で寝る事に抵抗のある方もいらっしゃるでしょう。確かに、からだに一番ストレスの少ない寝方は仰向け寝です。しかしそれは正しい姿勢である場合です。
悪い姿勢である場合は、基本的に仰向け寝の方がストレスが高いのです。ですから無理をして仰向けで寝る事にこだわらず、自分の寝やすい姿勢を探してみましょう。
少し硬めの布団を使用する
2つ目は、少し硬めの布団を選ぶ事です。悪い姿勢の方は背中の凹凸が強いので、寝た時どうしても凸部分に荷重が集中してしまいます。
特に布団が柔らかいと、荷重が集中する凸部分が布団に沈み込み、結果として凹凸がより強まってしまいがちです。
そこで少し硬めの布団を選ぶ事で、布団の沈み込みを押さえる事ができます。
ただし硬すぎる布団を選ぶと、今度は「背中が痛い」や「肩と首が疲れる」などの新たな問題が発生する場合もありすので、「やや硬い」程度の布団を選ぶのがよいでしょう。
膝を少し曲げて寝る
3つ目は、膝を少し曲げて寝ることです。膝を少し曲げると骨盤が安定して「反り腰」の状態を緩和させる事ができます。
とはいえ膝を立てる必要はありません。薄いクッションや布団などを膝の下にいれて、こぶし一つ程度膝の浮いた状態を作ります。この程度でしたら睡眠を妨げる事もなく安定して寝る事ができるはずです。
横向きに寝る場合は、膝を少し抱くようにして寝るのも効果的です。
以上、寝起きの痛みを防ぐ3つの対処法を紹介しました。それぞれ効果はあるのですが、一長一短があり万能とは言えません。というのも、寝ている時は頻繁に寝返りなどをする為、姿勢が不安定だからです。
又、あまり工夫しすぎると、今度は睡眠の質が下がってしまう場合もあります。しっかり睡眠をとる事が身体にとって最重要ですから、本末転倒にならないように「寝やすい」事を一番に考えましょう。
寝具の悩みの改善には姿勢矯正が一番
寝起きの症状をお持ちの方の中には、寝具を工夫したり悩んでいる方も多くいらっしゃいます。
しかし、姿勢の悪い方はからだに合う寝具を見つけるのが困難です。
なぜなら背中が凸凹である為に、からだの荷重をうまく分散できる寝具が物理的にないからです。
例えば背中の凸凹を吸収するような柔らかい寝具にすると、一時的に寝やすくはなるのですが、布団による押し返しがなくなった結果、背中の凸凹がより強まり、寝起きの腰痛や肩こりが逆になりひどくなる場合がよくあります。又、逆に固めの寝具にすると背中の凸部が圧迫されて痛むようになります。
このように単にストレスのかかる部位が別の場所に移動しただけで、しばらくすると別の新たな問題が発生してしまい、又新しい寝具に変えるのサイクルを繰り返してしまいがちなのです。
このような寝具の悩みを断ち切るには、最終的には根本原因である姿勢を矯正するのが一番です。そうして凸凹な背中を矯正する事ができれば、寝具について悩む必要はなくなりますし、寝起きの様々な症状も改善するでしょう。
まとめ
以上、寝起きの腰痛・肩こり・頭痛について解説しました。
たまにたっぷり寝た後にからだが痛くなる時があるけど、こういうことか・・・
それはただの寝すぎかもしれませんが・・・
最後にポイントをまとめます。
- 寝起きの痛みと姿勢との間には深い関係がある。
- 悪い姿勢になると背中が凸凹になる為、背中が布団に密着しない。密着しない部位の筋肉は緊張して、朝には痛みになる。
- 姿勢の悪い方は無理をして仰向けに寝ないで横向きやうつぶせで寝る方が良い場合が多い。
- 柔らかすぎる布団は避ける。
- 膝を少し立てるか横向きに膝を抱いて寝ると「反り腰」が緩和されて寝起きの腰痛予防になる。
- 根本的な解決は姿勢矯正。背中の凸凹が改善すれば寝具を選ばず熟睡できるようもなる。