ここでは正しい姿勢について紹介していきます。
正しい姿勢って、ようは背すじの伸びた姿勢だよね。わざわざ解説する必要あるの?
マラソンをする時にゴールの場所を知らずに走り出す人はいませんよね?
姿勢矯正も同じです。実際、姿勢矯正を失敗する大きな理由の一つは、正しい姿勢についての認識不足なのです。
ここでは正しい姿勢について解説していきます。
中には「見た目が良ければ正しい姿勢なのでは?」と思われる方もいらっしゃるかもしれまんせが、姿勢矯正をしようと考えているならば、それでは不十分です。
何故なら、見た目を良くしようとだけ考えて矯正をすると、大抵の場合「胸を張る」姿勢になってしまいうからです。胸を張る姿勢は確かに見た目は良いのですが、からだに大きな負担をかけて様々な症状を引き起こすという問題があります。
又、見た目には正しい姿勢に矯正されていても、からだはガチガチに緊張した状態になってしまうケースもあります。これでは、立っているだけですぐ疲れてしまいます。もちろんからだに良いわけはありません。
このような事にならないようにする為にも、姿勢矯正を始める前に、正しい姿勢についての基本的な知識をしっかりと身に着けておく必要があります。
姿勢矯正には少なからず手間と時間がかかります。最後にがっかりしないようにする為にも、この後の解説を読んでゴールとなる正しい姿勢についてのイメージを掴んでおきましょう。
正しい姿勢を図解する
まずは、正しい姿勢の見た目のイメージをつかむために、正しい姿勢の模式図を見ていきましょう。
上に示したのが、このホームページにおける正しい姿勢、「背すじの伸びた姿勢」です。全体的な見た目は「すらっと、自然でやさしい」という印象です。特徴を一つづつ簡単に紹介しましょう。
肩と頭が垂直線上にある。
正しい姿勢は、頭と肩がほぼ垂直にならんでいます。アゴは引きぎみで、目線は正面を据えています。
頭の重さの中心が首の中心と垂直である為、頭の重さを筋力で支える必要はほとんどありません。後頭部から喉にかけて全体に力みもなくリラックスした状態で、呼吸も深く発声はしやすい状態です。
背中はやさしいS字状。
背中はただ真っすぐなわけではなく、胸の中央で凸、腰の中央で凹状をしたやさしいS字を描いています。S字の形はバランスよく自然です。
S字を描いた構造は、完全に真っすぐであるより力学的に強いだけでなく柔軟性にも優れています。
軽く引き締まったお腹とお尻。
おなかは軽く引き締まった状態です。緊張しているわけではありませんから、呼吸は自然に行えます。下腹がやたらと目だったり、お尻が後ろに出てたりする事はありません。
正しい姿勢の方でも肥満してしまうと、ある程度はお腹が目立ちますが、下腹だけ目立つというケースはほとんどありません。
下半身はほぼ垂直。
下半身はかるく前傾していますが、ほとんど垂直の状態です。体重は足の裏全体にかかっていて、ふとももから膝にかけてリラックスした状態になっています。
こうやってみていくと、ただ背すじが伸びているだけでなくて色々と特徴があるんだね。
このような細かな特徴を知る事で、正しい姿勢のイメージがより正確になると思います。
正しい姿勢三つの条件
ここまで正しい姿勢の見た目について紹介しました。しかし重要ポイントは、このような「見た目」ではありません。
姿勢は、人間の一番根本の機能が表出したものです。家事・仕事・遊び・睡眠など、人間の全ての活動に関わる姿勢は、美しいだけでなく機能的である必要もあります。
その為、正しい姿勢は以下の三つの条件を満たす必要があると私は考えています。
- 疲れにくいこと。
- 特定の部位に負担が集中しないこと。
- 動きやすいこと。
それぞれ簡単に解説していきましょう。
疲れにくいこと。
正しい姿勢は疲れにくい必要があります。もし、姿勢を維持するのに余分な体力を必要としたならば、全ての活動において疲労度が増してしまうからです。
正しい姿勢であれば姿勢を維持する為の力はほとんど必要としません。何故なら姿勢を支えているのは骨格であり、筋肉ではないからです。
上の図は正しい姿勢と悪い姿勢の体重のかかり方を示した図です。図中の赤い垂直線が体重の通り道を示しています。
左の正しい姿勢を見ると、体重はほぼ背骨にそって骨盤に抜けていくのがわかります。一方、右の悪い姿勢は所々背骨からはずれている事がわかります。
負担が骨格だけにかかっていれば、姿勢を維持する為の筋力はほとんど必要ありません。そのおかげで正しい姿勢ははつねに全身がリラックスした状態で疲れにくいのです。
一方悪い姿勢は、負担のかかる部位がところどころ骨格からはずれる為(はずれている部位が腰と肩にある点も注目)、筋力により姿勢を維持しなければいけません。当然、緊張しやすく疲労もたまりやすくなります。
特定の部位に負担が集中しないこと。
正しい姿勢は、からだにかかる負担を特定の部位に集中させる事なく、全体に分散させる姿勢である必要があります。負担が一点に集中すると、その部位に痛みなどの症状がでてしまうからです。そうである為には、からだは垂直に近い方が合理的です。
上図は、からだの傾きによるストレスのかかり方の違いを示した図です。左の正しい姿勢は、からだがほぼ垂直である為、からだの前後にかかる負担はほぼ同一です。
しかし、右の悪い姿勢(例は胸つき出し姿勢)は、からだが弓なりになり背中が上下に縮められています。筋肉は縮まると収縮して緊張しますから、からだにかかる負担は背中側に集中するようになります。
動きやすいこと。
正しい姿勢は、全ての動作における起点です。その為、動きやすい姿勢である必要もあります。
動きやすい姿勢である為には、全身の関節が締め付けられたりせず、中間位(動きの中間の位置)でなければいけません。わかりやすい例は膝関節です。
正しい姿勢における膝関節は、前後どちらにもすぐ動けるように、ゆるい状態になっています。一方、悪い姿勢の膝関節は、つき出たお腹にひきづられ過伸展した状態になり、強く締め付けられた状態になります。
締め付けられた関節は、連結が強まり安定感があるよう感じるかもしれません。しかし、締め付けられた状態では、とっさの動きには対応できません。例えば電車が急にゆれた時に、バランスを立て直す事ができずに足元が崩れてしまいやすいのです。
一方、正しい姿勢の膝関節はゆるい状態である為、慣れないと不安定に感じるかもしれません。しかし、とっさにかかる力に対しては機敏に反応します。その為どのような外部からの力に対しても、柔軟にからだを守る事ができるのです。
以上、正しい姿勢における三つの条件を紹介しました。このような条件を満たした正しい姿勢である時の感覚を言葉で表してみましょう。
実際に立っている時の感覚は「自然体」「ニュートラル」というイメージです。
特定の身体部位に力が集中しているという感覚はなく、身体全体が軽く緊張している感覚。肩からは力が抜けていて、腕の重さを感じ取れます。
呼吸をすると身体全体に空気が通るような、自然な感覚。足下は、しっかり地面に立ってはいますが、それと同時に少し身体がゆらぐような感覚もあります。
うーん、なるほど。なんか武道の達人みたいな感覚をイメージすればいいのかな?
近いものがあると思います。
なぜ胸を張る姿勢は正しい姿勢ではないのか
さて、ここまで読んで正しい姿勢のイメージは掴めたでしょうか。ここで終わりにしてもよいのですが、付け加えておかなければいけない事が一つあります。
それは、胸を張る姿勢についてです。なぜなら多くの方が胸を張る姿勢こそ正しい姿勢だと無意識に考えているからです。
確かに胸を張る姿勢は見た目に美しい姿勢ではあるのですが、「体に悪い」という致命的な問題があります。
正しい姿勢はからだに負担のない姿勢でなくてはいけません。ですから胸を張る姿勢は正しい姿勢とは言えないのです。
胸を張る姿勢の問題点については詳しく以下の記事で解説していますので、ここではなぜ胸を張る姿勢がからだによくないのか、簡単に紹介しましょう。
まずは上図をご覧ください。左は胸を張った姿勢、右は正しい姿勢です。図中の赤線は、背中の形をわかりやすくする為の線です。
両者の姿勢をくらべると、胸を張る姿勢は正しい姿勢と比べてからだが大きく反り返っている事がわかります。このメリハリのあるボディラインは胸を張る姿勢の美しさの要素の一つです。
先ほども見せた上図は、からだが反り返ると全身の筋肉がどう働くのかを示した図です。
右の胸を張った姿勢は、全身が反り返る事で背中は強く緊張しています。つまり、背中が疲れやすく、背部痛や腰痛になりやすい姿勢なのです。
胸を張った姿勢は、言い換えれば軍隊式の直立不動の姿勢と同じです。ある研究では、軍隊式直立姿勢になると、下半身の筋肉の負担が増大し、体全体のエネルギー消費量は20%アップするという結果が出ています。つまり、疲れやすくなるのも問題の一つです。
これ以外にも、胸を張る姿勢と関係する症状はたくさんあります。代表的なものあげると以下のようになります。
- 頭痛・肩こり・手のしびれ
- 腰痛・背部痛・ふとももの張り・膝の痛み
- 冷え・むくみ・足のしびれ・慢性疲労・消化器系機能低下
- 息苦しさ・胸のつまり感
- 緊張しやすく疲れがとれにくい
このような様々な症状を引き起こす姿勢は、やはり正しい姿勢とはいえません。
しかし、胸を張る姿勢が美しい姿勢である事は確かです。特におしゃれな洋装(洋服)をした時には、胸を張る姿勢であると、服装が際立ちます。
この事実を簡潔に表しているのが、マネキンです。マネキンは着せられた服種が一番引き立つように作られているからです。
ですから、胸を張る事を完全にやめる必要はありません。時と場所に合わせて、胸を張る姿勢と本来の背すじの伸びた正しい姿勢を使い分ければよいのです。
例えば、おしゃれをして出かけるときは胸を張る姿勢を意識する、ただし自宅に帰ってリラックスする時は、背すじの伸びた本来の正しい姿勢を意識する、というように使い分ける事ができれば、からだに問題が出る事はないでしょう。
まとめ
以上、正しい姿勢について紹介しましたが、いかがてしたでしょうか。
うん、しっかりイメージがつかめたよ。
せっかく姿勢矯正するならば、見た目だけでなく、健康に良い「リラックスして心地よい」姿勢になりたいですね。
そうなる為にしっかり正しい姿勢のイメージを頭に叩き込んでしまいしまょう。
了解!!
最後にポイントをまとめます。
- 正しい姿勢は背すじの伸びた姿勢。
- 正しい姿勢はからだに負担のない姿勢である。
- 正しい姿勢は疲れにくい姿勢である。
- 正し姿勢は動きやすい姿勢である。
- イメージとしては力みのないリラックスした姿勢。武道の達人の姿勢。
- 胸を張る姿勢はからだに悪い為に正しい姿勢とは言えない。しかしTPOに合わせて胸を張る程度であれは問題なし。