はい、質問のお手紙が届いています。
はいはい。
最近姿勢が悪くなったように感じています。こちらのサイトを読むと、姿勢の悪くなる原因は主にだらしのない座り方にあると書かれていますが、私は普段販売の仕事をしており、ほぼ一日中立ちっぱななしの生活をしています。私のような場合、立ち姿勢に原因があって姿勢が悪くなったのでしょうか。
立ち姿勢が原因で悪い姿勢になる場合があるのかという質問ですが?
もちろんあります。特に質問者の方のように日常的に立ち姿勢でいる方に多いです。
ここでは悪い姿勢の原因となる「立ち方のクセ」と、その予防法を解説します。
姿勢の崩れる立ち方のクセ
悪い姿勢になる原因の多くは「座り方の悪いクセ」にあります。特に以下の図のような「頭を前につき出して座るクセ」は頻繁に見られる悪い姿勢になる原因です。
しかしもちろん全ての原因が「座り方のクセ」にあるわけではありません。この質問者の方のように長時間立ちっぱなしの生活をしている方の場合、「立ち方のクセ」から悪い姿勢になる場合ももちろんあるのです。
そして中でも「おなかを前に突き出して立つクセ」は頻繁に見られる悪い姿勢になる原因です。
上は「お腹を前に突き出して立つクセ」を模式的に示した図です。図を見てわかるように、左の正常な状態にくらべると、お腹が前に突き出ている事がわかると思います。このような状態を「反り腰」ともいいます。
このようなクセがつくのは、主に長時間立っている事による疲労が原因です。
座り姿勢と比べて立ち姿勢を支えるにはより多くの労力が必要です。その為、ただ立っていただけなのに疲れてしまったという経験は多かれ少なかれ誰にでもあるはずです。
疲れたら休めればよいのですが仕事中であればそうもいきません。そうして疲労が蓄積してくると、無意識にしてしまうのが「おなかを前に突き出す」という動作なのです。
ではなぜ疲れるとお腹を前に突き出してしまうのでしょうか。
主に立ち姿勢を支えているのは体幹、特にお腹周りの筋肉です。ですから長時間立っているとまず最初に体幹部を休ませたくなります。そこでお腹を前に突き出すと、「腰骨」と「下半身の筋肉」に負担が移動して体幹部の筋肉群を休ませる事ができるのです。
これは実際に立ってお腹を突き出してみると感覚的に理解できます。お腹が突き出るのに比例してお腹から力が抜けて腰骨に体重がかかり、合わせて太ももからふくらはぎが緊張するのを知覚できるはずです。
このように立ち仕事で疲れる度にお腹を前に突き出していれば、いつのまにかそれは習慣となりクセとなってしまいます。そしてそこから悪い姿勢、多くは猫背になってしまうのです。
お腹を前に突き出すクセから猫背になる仕組み
次にお腹を前に突き出すクセから悪い姿勢になる仕組みを簡単に解説しましょう。
上図は、正しい姿勢(左)からお腹だけ前に突き出した状態(右)を示した模式図です。
図を見てわかる通り、お腹を突き出た事で全身がのけぞった状態になる事がわかります。一見しておかしな姿勢ですが、もちろん実際にこのような姿勢になる事はありません。
何故なら、からだには強力なバランス安定装置がついていますから、図のような姿勢になる前に、無理のない姿勢に変化するからです。では通常からだはどのように上のような状態を回避するのでしょうか。下図を見てください。
上図を見てわかる通り、反り返った上半身をおこして目線を正面に戻し、重心を安定させている事がわかります。そして背中の形に注目すると、上半身をおこした事で猫背になった事がわかります。
つまり、お腹が前に突き出るとからだは安定性を失い、それを安定させる為に自然に猫背になってしまうのです。
自分の立ち方が悪いかどうか確認する方法
ここまで立ち姿勢から悪い姿勢になる典型的な仕組みを紹介しました。日常的に立っているのにもかかわらず姿勢の悪い方は、まずはこの「お腹を突き出すクセ」がすでに身に付いるかどうか確認してみましょう。
確認する一番簡単な方法は、立った状態でアゴを引いて足下の見え方をチェックする方法です。
足もと(くるぶし)が見えていれば正常ですが、もし足下が見えずお腹しか見えなければ、突き出たお腹で視界を塞いでいる証拠ですから、すでに「お腹を突き出すクセ」が身に付いている可能性が大きいでしょう。
又、調理台などに向かって立ち仕事をしている方は、作業中にお腹が作業台に接地しているかどうかも確認してみて下さい。もし、お腹を作業台にくっつけながら作業をしているならば、お腹を前に突き出すクセのある証拠です。
ひどい方になると、作業台にお腹を密着させる事で姿勢を支えるクセがついている場合もあります。
「お腹を前に突き出すクセ」を改善するコツ
ここまで悪い姿勢の原因となる「お腹を前に突き出すクセ」について解説しました。ではこのクセを避するにはどうしたらよいのでしょうか。いくつかポイントを紹介しましょう。
体幹を鍛える
まず一つ目の解決法は、体幹部を鍛えることです。そうすることで長時間立ち姿勢を維持する負荷に耐えれるようになり、お腹が前に出にくくなります。
アゴが上がらないように意識する
意識的に「お腹を前に出すクセ」を改善するのが困難なのは、お腹の位置を正確に知覚しずらい事が要因としてあげられます。つまりお腹が前に出ていても、鏡でもみないかぎり本人はなかなか気づかないものなのです。
そこでお腹ではなく頭の位置を意識するようにしましょう。具体的にはアゴがあがらないように意識するのです。お腹とは異なり、頭の位置は敏感に知覚する事ができます。そしてアゴが上がらなければ自然にお腹も前に出なくなります。
何故かというと、お腹を突き出すクセには必ず「アゴ上がりのクセ」が伴うからです。詳しい理由は以下の記事を参考にしてください。
足の裏の重心位置をくるぶし付近に維持する。
頭の位置と同様に足の裏の重心位置も知覚しやすい為、意識するには適した部位です。
正しい立位姿勢であれば、土踏まずあたりに重心は位置しています。しかしお腹が前に出てくると、カカト付近まで重心が下がってきます。
もし重心位置がカカトに下がっていると感じたら、お腹が前に出ている証拠です。お腹の位置を調整して重心位置を土踏まずあたりにコントロールするよう意識してみましょう。
まとめ
以上悪い姿勢の原因となる立ち方のクセについて解説しました。
お腹を出すクセから悪い姿勢になるのはわかったけど、確か猫背になると必ずお腹は前に突き出てくるんじゃなかったっけ?
そうなんです。ですから立ち姿勢から悪い姿勢になる過程は、座り姿勢からの場合と順序が逆なだけとも言えます。
さらに変形は同時進行でおこりますから、その過程は座り姿勢の場合と実はほぼ同じなんですね。
最後にポイントをまとめます。
- 立ち方のクセから猫背になる場合もある。
- 「お腹を前に突き出して立つクセ」が主要な原因
- クセを防ぐには、体幹部を鍛える事、アゴがあがらないようにする事、からだの重心位置を土踏まず付近にとどめるよう意識する事が効果的。