ここでは肩こりと姿勢との関係を解説していきます。
僕も猫背で肩こりなんだよねー。やっぱり関係しているの?
確かに猫背は肩こりになりやすい姿勢ですが、実は猫背以外にも肩こりになりやすい姿勢はあるのですよ。
悪い姿勢になると真っ先に出てくる症状、それが首こり・肩こりです。特に背中が丸い人、つまり猫背の人は肩こりになりやすい傾向があります。
では、どうして背中が丸くなると肩こりになるのでしょうか? ここでは姿勢と肩こりの関係について詳しく解説していきます。
ここでの記載内容は各種文献と著者の治療室における統計分析に基づいた一定の信頼のおけるものですが、症状の原因は個人により様々です。症状が深刻な場合は、まず最初に専門の医療機関で診断を受けるようにしましょう。
猫背になると肩こりになる
まず最初は、猫背と肩こりの関係を解説します。
なんで猫背になると肩こりになるの?
それは猫背になると、肩の筋肉の負担が増加するからです。
猫背は悪い姿勢の中でも肩こりになりやすい姿勢です。その理由は、背中が丸まると肩の筋肉の負担が増大するからです。では、なぜそうなるのでしょうか。
そうなる理由には、頭の重さと首の太さのバランスが関係しています。
生活の中で意識される事はまずありませんが、人間の頭は意外に重くて、大玉スイカ(3〜5kg)程度もあります。そのような重い頭を支える構造として首を見ると、頼りない太さだと言わざるえません。
細い首で重い頭を安定して支えるには、頭と首が力学的に効率の良い位置関係である必要があります。そしてそれが垂直の位置関係です。
上図のように頭と首が垂直に近い位置関係にあれば、安定して頭を支える事ができます。実際、正しい姿勢においてはこれに近い位置関係です。
しかし、猫背になると、首と頭の位置関係も変化します。
背中が丸まる事で、首は前に傾き頭は前方にずれてしまうからです。
上図は猫背により頭と首の位置関係が崩れた状態を示しています。このような後ろから頭を支える位置関係では、安定して頭を支え続ける事ができません。そこで補助として働くのが、肩から首の筋肉です。
肩から首の筋肉は、前にこぼれおちそうになる頭の重さを支えるように働きます。その為に蓄積した疲労により、首こり・肩こりになってしまうというわけです。
下の図は、著者治療室の統計による猫背と肩こりの関係を示したグラフです。
グラフの横軸は猫背の程度、縦軸は肩こりの比率を示しています。グラフの右にいくほど猫背の程度が強くなると考えて下さい。
グラフを見ると、左端では肩こりを訴える人は半数程度ですが、猫背の程度がひどくなるにつれて肩こりを訴える人の割合が増え、右端になると7割以上の人が肩こりを訴えている事がわかります。
このような事実からも、猫背の程度と肩こりは、ほぼ比例関係にあると言っていいのです。
猫背による肩こりには、以下のような特徴があります。
- 後頭部のつけねから肩のつけねにかけてのコリが強い。
- 長時間座っていた後にコリがでやすい。事務職の人に多い。
なるほど。頭はスイカとおなじくらい重いのか。両手で持っても重いものを細い首だけで支えるのだから、そりゃ肩もこるよね。
その通りです。
ストレートネックになると肩こりになる。
ここまで猫背と肩こりの関係について解説しましたが、実は猫背より肩こりになりやすい姿勢があります。
猫背だけじゃなかったの?
一番肩こりになりやすい姿勢、それは首が真っすぐになったストレートネックの姿勢です。
え? これ頭と首はより垂直になっているよ。むしろ肩こりにならないんじゃないの?
いきすぎた状態はむしろ体にとって負担なのです。
正しい姿勢より頭と首が垂直の状態、それがストレートネックです。ストレートネックは首が真っすぐに変形した姿勢で、近年増加傾向にあります。
実は正しい姿勢であっても、首は完全に真っすぐなわけではありません。首には軽度のわん曲があり、凸状の形をしています(上図参照)。しかしストレートネックになると、首のわん曲も消失して完全なる垂直状態になります。
力学的に考えれば問題ないように思えますが、実際はストレートネックは強い首こり・肩こりを引き起す原因となっています。
このように肩こりになるのは、ストレートネックが体に不自然な状態だからです。
ストレートネックは正しい姿勢よりさらに首が真っすぐになった状態です。これは首の関節構造から考えても無理のある状態です。このような不自然な状態を維持するには、からだを強く緊張させる必要があります。
これは体感すると理解しやすいので、次の事を実践してみましょう。まず肘を自然に伸ばした状態にします。そして、そこからさらに力をいれて肘を伸ばしてみてください。
力をいれるとわずかですが、肘は反るように動くはずです。これは関節構造に「遊び」があるからなのですが、肘の関節構造からすると不自然な動きです。その為、その状態を維持しようとすると、わずかな動きであるにもかかわらず、かなりの筋力必要とする事が体感できるはずです。
ストレートネックもこれと同様で、首の関節構造に逆らう不自然な状態を維持するには、首から肩にかけての強い緊張を必要とするのです※1。
このストレートネックによる筋肉の緊張は、かなり強いものです。その為、症状もより強く明確になります。
上図は著者の治療室の統計によるストレートネックと肩こりの関係を示したグラフです。
横軸はストレートネックの程度を示していて、グラフの右にいくほど首が真っすぐである事を示しています。縦軸は肩こりの人の割合です。
グラフを見ると、左端では半数程度だった肩こりの割合が、ストレートネックになるにつれて増加して、最終的には9割ほどの人が肩こりを訴えるようになる事がわかります。
ストレートネックによる肩こり・首こりには以下のような特徴があります。
- 特に首こりが強い。
- 首を触るとパンパンに筋肉が張っている事がわかる。
- 肩から首にかけて背骨がもりあがっていて、触ると骨の形を確認できる。
- 本人に緊張しやすい傾向がある。
首は傾いても真っすぐ過ぎても、肩こりになるってことか。
その通りです。二本足で立つ人間にとって首は弱点になりやすく、バランスの崩れに反応しやすい部位なのです。
※1 わかりやすさを優先してこのように記述しましたが、実際のケースはもっと複雑です。ストレートネックになると首の筋肉が緊張するのは事実ですが、筋肉が緊張した事で首の骨が引っ張られて垂直に変形する逆のケースも多々あります。このよえにからだの変形の起源は「にわとりの卵問題」のようにあいまいである場合が多いのす。
胸を張ると肩こりになる
もう一つ肩こりと関係するのが、肩甲骨を背中に引き寄せた姿勢です。
肩甲骨って、背中にある三角形の骨の事だよね。
そうです。この肩甲骨が正常より背中に寄ってしまうと、肩こりになりやくなります。
どうして肩甲骨が背中に寄るの?
多くの場合、習慣的に胸を張る事が原因です。
肩甲骨とは、肩関節を構成する背中に張り付いている骨です。通常は、背中のやや外側に位置しています(下図)。
しかし胸を張る習慣があると、肩甲骨は背中に引き寄せられるように動きます(下図参照)。
こうなる直接の原因は、胸を張る動作に肩甲骨を背中に引き寄せる動作も含まれているからなのですが、肩の前に出ている状態(巻き肩)を気にしている方に胸を張るクセがつきやすい事も間接的な原因です。
肩甲骨が背中に寄ると肩こりになるのは、肩甲骨が肋骨の動きを妨げてしまう事が一番の原因です。
肋骨は肺を包む骨で、呼吸のたびに上下して呼吸を補助する働きをしています。背中側に引き寄せられた肩甲骨は、肋骨に覆いかぶさる事で、肋骨の動きを制限してしまうのです。
イメージできない方は、実際に胸を張って肩甲骨を背中に引き寄せた状態で大きく呼吸してみましょう。胸側の肋骨は大きく動く一方、背中側の肋骨に動きがない事を体感できるはずです。
呼吸のたびに行われる肋骨の動きは、肩回りの循環を促す重要な役割を担っています。その為、肋骨の動きが妨げられると、肩周辺の循環が阻害されて、肩こりになってしまうのです。
肩甲骨が背中に寄った事による首こり・肩こりには以下のような特徴があります。
- 肩の外側(肩甲骨表面)を押すと強く痛む。
- 首の前、鎖骨付近に違和感や詰まった感じがする。
- 肩甲骨の間に強いコリを感じる。
- 普段から息苦しさを感じている場合も多い。
肩甲骨って背中に寄っている方がむいろ良いと思ってたよ。
確かに前に出すぎてもいけないのですが、背中に寄りすぎてもいけないのです。
過ぎたるは及ばざるが如しという事かな。
胸を張る姿勢はこの肩甲骨のズレだけでなく、前述のストレートネックとも深く関係しています。関連記事を以下に紹介しますので、興味のある方はご覧ください。
まとめ
以上、姿勢と肩こりの関係について紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。
僕が肩こりなのは、猫背が原因だってよくわかったよ。
もし原因が悪い姿勢であるならば、姿勢矯正をすれば必ず楽になりますから、機会があれば是非チャレンジしてみましょう。
最後にポイントをまとめます。
- 猫背になると、首から肩にかけての筋肉の負担が高まり、肩こりになる。
- ストレートネックになると、首の緊張が高まり、首・肩こりになりやすい。
- 肩甲骨が背中に寄りすぎると、肋骨の動きが妨げられて肩周辺の循環が悪くなり、肩こりになる。