ここではストレートネックについて解説していきます。
ストレートなネックだから「真っすぐな首」って事かな?
その通りです。正常な首には下図左のような湾曲があるのですが、ストレートネックになると、右のような真っすぐな状態になります。
ストレートネックは首・肩こりや頭痛などを引き起こす原因として、近年注目されています。実際、私の治療室でもストレートネックの悩みを抱えた方は急増しています。
なんで急に増えてきたの?
ある悪い姿勢の増加と関係しているのではないかと私は考えています。それについてはこの後解説しましょう。
なぜストレートネックになってしまうのか、まだはっきりとした定説はありません。しかし、主要な原因の一つになっているのは悪い姿勢ではないかと私は考えています。
そこでここではストレートネックと悪い姿勢との関係について解説していきましょう。
胸を張るとストレートネックになる
結論から言うと、ストレートネックになってしまう主な原因は、姿勢を正そうとして「胸を張る」クセがついたからではないかと私は考えています。
多くの方は胸を張ると背すじ伸びて姿勢が正されると考えていますが、これは事実ではありません。
確かに、胸を張ると背すじの伸びたように見えます。しかし、それはあくまで印象だけで、実際は背すじは伸びていないのです。
上図は、肩の丸い猫背の方が胸を張ると背中の形はどのように変化するかを示した図です。
図中の交わる直線の角度は、背中の曲がり具合を示しています。角度に注目すると、左の猫背と右の胸を張った姿勢の間にはほとんど差のない事がわかります。つまり、胸を張った後も背中の曲がり具合そのものは変化していないのです。
実は、胸を張ることとは、背すじの伸ばす動作ではなく「胸を上に突き上げる」動作なのです。
では、胸を張ると背すじが伸びたように見えるのはどうしてでしょうか。
胸を張ると、背中の丸まりが胸の傾きの角度に変換されます。その結果、背中の丸まりは目立たなくなり背すじが伸びているような印象を与えるのです。
注目してほしいのは、胸が持ち上がったことで、首が直立してストレートネックになっている点です。胸を張った姿勢が美しく見えるのは、ストレートネックになる事も大きな理由なのです。
もちろん、一時的に胸を張る程度であれば、一旦ストレートネックの状態になってもすぐに元の状態に戻ります。
しかし、胸を張る事が習慣化すると、時間とともにストレートネックの状態が固定されてしまいます。一度そうなれば自然には元に戻りません。ちなみに、このような胸を張った状態で固まった姿勢を、ここでは「胸つき出し姿勢」と呼んでいます。
胸を張るクセのある人が増加している
ストレートネックという言葉は、以前はあまり知られていませんでした。お医者様がこの言葉をよく使われるようになったのはここ最近の事だと思います。
広く知られるようになったのは、認知の広まりもありますが、やはりストレートネックの人が増加したからではないかと私は考えています。
ストレートネックの人が増加したのは、若い人(特に女性)を中心に身だしなみに対する意識がより高まっている事が要因の一つだと私は考えています。
姿勢は身だしなみの基本です。その為できるだけ見た目のよい姿勢をになろうとして無意識に胸を張る習慣が身に付いてしまう場合が多いのです。この傾向は特に女性に多く見られます。
上のグラフは、男女別の悪い姿勢の比率を示しています。注目してほしいのは胸つき出し姿勢の男女の比率です。
先にも言いましたが、胸つき出し姿勢とは胸を張ったまま固まった姿勢のことです。胸つき出し姿勢の比率をグラフから見ると、男性はわずかに7%ですが、女性は過半数を超えた54%であることがわかります。このグラフからも、胸を張るクセは女性につきやすいことがわかります。
このように女性には男性と比べて身だしなみをより気にする傾向があり、その為ストレートネックにもなりやすい傾向があるのです。
ストレートネックによる典型的な症状
ストレートネックの一番の問題は、からだに負担になる事です。次はストレートネックと関係するいくつかの症状を紹介します。
首・肩のコリ
ストレートネックは首と肩に強いコリの症状を引き起こします。
正常な首には凸状の湾曲がありますが、ストレートネックになるとこの湾曲は消失してしまいます。ひどい場合はわん曲が逆転して凹状になってしまう場合もあります。
首のわん曲の消失がどのような影響を及ぼすかは医学的にまだよく解明されていません。しかし、真っすぐな棒より曲がった棒の方が柔軟であるように、力学的な負担が大きくなるのは明らかです。
又、単純にストレートネックになると首から肩にかけて筋肉が強く緊張するのも要因の一つです。よろしければ実際に胸を張ってみてください。背中から首にかけてが強く緊張する事が感覚的に実感できるはずです。
上図はストレートネックと肩こりの関係を示したグラフです (※私の治療室における統計データ。無作為に抽出した300人の姿勢写真から分析)。
横軸はストレートネックの程度を示していて、グラフの右にいくほど首がまっすぐである事を示しています。縦軸は肩こりの人の割合です。
グラフを見ると、左端では半数程度だった肩こりの割合が、ストレートネックになるにつれて増加して、最終的には9割ほどの人が肩こりを訴えるようになる事がわかります。
頭痛
ストレートネックによるもう一つの典型的な症状が頭痛です。これは首の筋肉の緊張が原因となっています。
首の筋肉の緊張による頭痛を「緊張性頭痛(きんちょうせいずつう)」といいます。これは頭の付け根から後頭部にかけて伸びる「大後頭神経(だいこうとうしんけい)」が首の筋肉の緊張により締め付けられる事が原因の頭痛です。
ストレートネックになり首の筋肉が緊張すると、筋肉の下にある大後頭神経を刺激して頭痛を引き起こします。後頭部を中心としたズキズキとした鈍痛が特徴です。
ストレートネックを改善する方法
次は、このやっかいなストレートネックを改善するにはどうしたらよいのか考えてみましょう。
最初にも述べたように、ストレートネックになる原因はまだはっきりとわかっていません。しかし、もし原因が悪い姿勢であるならば、対策をする事は十分可能です。その改善方法を紹介しましょう。
まずはともかく、胸を張るクセを少しでも改めなければいけません。とは言え、完全に胸を張る事をやめる必要はありません。
例えば、外出時やフォーマルな場では今まで通り胸を張って、自宅で過ごす時は胸を張らないで過ごす程度でも大丈夫です。要は習慣にしなければ良いのです。
自分が胸を張っているかどうかわからない時は、背中の中央を意識してみましょう。そこに力みを感じたら、胸を張っているサインです。
そのような時は、背中から力をぬいて軽くお腹を力ませます。そしてゆっくり深く呼吸をしてみましょう。自然に胸が下がってくるはずです。
胸を張るクセを治そうとすると、人によっては、背中を丸めたように感じて不安になってくる場合があります。
そのような時は、背すじの伸びた正しい姿勢を頭の中でイメージしましょう。下の記事を参考にしてください。
正しい姿勢のイメージをしっかり頭に思い浮かぶようになると、背中が丸まっているような不安は解消されるようになります。
ストレートネックの方は、首から肩にかけてが強く緊張していて、硬く固まっている状態になっています。これらを柔らかくしなければ、最終的にストレートネックは改善されません。
柔らかくするには以下に紹介するエクササイズがお勧めです。
まとめ
以上、ストレートネックについて紹介しました。
胸を張るとストレートネックになるんだね。
そうです。それ以外にも、姿勢を気にするあまり首を真っすぐ伸ばそうと意識しすぎてそのままストレートネックになる場合もあります。
共通しているのは、見た目を気にしすぎている点ですね。
もちろん見た目は大事だけど、それでからだを悪くするのは問題だね。
そうです。いくら見た目がよくても、からだに無理をかけると、後から後悔する事になりやすいので注意しましょう。
最後にポイントのまとめです。
- 胸を張るクセがストレートネックになる主な原因。
- ストレートネックによる主な症状は、肩・首のこり、頭痛、息苦しさなど。
- ストレートネックを改善するには、胸を張るクセをなおして首から肩を柔らかくする事が重要。