なで肩・いかり肩は生まれつきの問題だと考えていませんか?
もちろん、そうである場合もあるのですが、別の原因でそうなる場合もあります。
その原因とは悪い姿勢です。
ここでは悪い姿勢による「なで肩・いかり肩」について解説してきます。
なで肩・いかり肩は肩甲骨の位置で決まる
まず最初に、なで肩・いかり肩とはどのような状態なのか確認しておきましょう。
なで肩・いかり肩とは、肩の見え方が通常とは異なる状態の事です。
具体的には、肩が下がって肩幅が狭まった状態が「なで肩」。逆に、肩が上がって肩幅が広がった状態を「いかり肩」といいます。
もちろん実際は、頭の位置や大きさ、筋肉のつき具合なども関係していますが、大雑把に言ってしまえば、肩の位置がずれてる状態が「なで肩・いかり肩」だと言っていいでしょう。
そして、その肩の位置を決めているが、下図に示す肩甲骨(けんこうこつ)です。
肩甲骨とは背中にくっついている三角形の骨です。腕の骨はこの肩甲骨に接続していますから、「肩の位置 = 肩甲骨の位置」と考えて問題ありません。
他の骨と比べて肩甲骨の動きには自由度があり、背中の曲面に沿って自由自在に動く事ができます。
上の図は、からだを上から見た肩甲骨の位置を示したものです。
肩甲骨に付属する丸い部分は腕の骨で、ここが外から見た肩の位置となります。
正常時、肩の位置はからだの側面中央に位置しています。
次は、なで肩・いかり肩である時の肩甲骨の位置を見ていきましょう。
まずはなで肩です。
上図のように肩甲骨が外側に動くと、肩幅は狭くなり、なで肩の状態になります。
外側に動いたのに肩幅が狭まるのは、背中が曲面である為、腕の骨の向きが内向きになるからです。
肩甲骨が外側に動く ⇒ なで肩
一方、上図ように肩甲骨が内側に動く(背中に寄る)と肩幅は広がり、いかり肩の状態になります。
先と同様、動きとは逆の見え方になる事に注意して下さい。腕の骨が外向きになる為、肩幅は広がって見えるようになるからです。
肩甲骨が内側に動く ⇒ いかり肩
このように、肩甲骨の位置の変化が要因となって、なで肩・いかり肩になる事がご理解いただけたと思います。そして肩甲骨の位置を変化させる主要な要因こそ、悪い姿勢なのです。
次は「なで肩・いかり肩」と姿勢との関係を個別に見ていきましょう。
なで肩の原因は猫背にあり
まずは「なで肩」と姿勢との関係です。
なで肩と関係する姿勢、それはズバリ猫背です。
猫背になると、背骨はくの字状に曲がります。その時、丸みの頂点部分は後ろに押し出されるように動きます。下の図で確認して下さい。
上図左は正しい姿勢で右が猫背の状態です。背中がくの字に曲がる事で、その頂点部が背中側に押し出される事が図からわると思います。
注目してほしいのは、三角形で示された肩甲骨の位置です。背中が押し出された事で相対的に前方に移動した事がおわかりになるでしょうか。
このように背中が丸まると、相対的に肩甲骨は外側にずれた状態となり、結果、なで肩になってしまうのです。
「胸を張る」といかり肩になる
次に「いかり肩」と姿勢との関係です。
「いかり肩」は、胸を張る事と関係しています。
多くの方は胸を張ると「せすじ」が伸びると考えていますが、実際はそうではありません。
上図は、背中の丸まった状態(図左)から、胸を張った姿勢(図右)への変化を示した模式図です。図中の直線の交わる角度に注目して下さい。この角度は背中の丸まり具合を示しています。
両者を比べるとほぼ同じ角度である事がおわかりいただけるでしょうか。つまり、胸を張っても背中の形は変化せず、胸が上に突き上がるだけなのです。
そして、胸を張る動作には背筋の強い緊張が伴います。
背筋の緊張は肩甲骨を背中に引き寄せて、内側に動かします。その結果、「いかり肩」になってしまうのです。
いかり肩で悩んでいるのは多くの場合女性です。女性は男性と比べて胸を張る習慣が身に付きやすいからです。
なで肩・いかり肩を改善するストレッチ
さて、ここまで悪い姿勢と「なで肩・いかり肩」の関係を解説してきました。次はその改善方法を紹介しましょう。
ここではお手軽な方法であるストレッチ運動による改善法を紹介します。ストレッチの種類はなで肩といかり肩で異なりますので、それぞれ分けて紹介しましょう。
エクササイズの注意事項
紹介したエクササイズによるいかなる事故・事象も当方では責任は負いかねます。以上同意の上、自己責任で行ってください。
なで肩を改善するストレッチ
肩甲骨が外側に動くと、胸側の筋肉は収縮して硬くなります。ですから胸をストレッチすれば、肩甲骨を正常な位置に戻す事が出来ます。
上図左のように壁に肘をひっかけて、体全体を前に踏み込む事で胸の筋肉をストレッチします。
自宅にドア開きの入り口などがあれば、上図右のように両手をあげて両胸同時にストレッチする事もできます(図右)。
いかり肩を改善するストレッチ
内側に引き寄せられている肩甲骨を、外側にストレッチする事でいかり肩を改善します。
上図のように椅子に座り、両手をクロスして足に挟み込み、肩甲骨を外側に広げるようにからだを足に押し付けてみましょう。
力むと肩が上に持ちあがってしまいますので、意識的に肩から力をぬいて行うようにしましょう。
根本的な解決には姿勢矯正が必要
最初にも述べましたが「なで肩・いかり肩」の原因は悪い姿勢だけではありません。生まれつきの骨格や筋肉の発達の問題などいくつもありますので、その点は注意してください。
しかし、もし猫背であったり胸を張る習慣があるのならば、その原因は悪い姿勢である可能性は高いでしょう。その場合、紹介したストレッチは十分有効に働きますから、是非挑戦してみてください。
とはいえ、完全に「なで肩・いかり肩」を改善しようと考えるならば、最終的にはその大元の原因、悪い姿勢を矯正しなければいけません。
もちろん、ある程度の改善でしたら、紹介したストレッチでも十分可能です。しかし、大元の原因がそのままでは、いずれ元の状態に戻ってしまう可能性もあります。
姿勢を矯正してみたいと思われたならば、まずは以下の記事で姿勢矯正のおおまかな流れを確認するとよいでしょう。
姿勢矯正をすれば、肩甲骨の位置は自然に正常の位置に戻ります。是非挑戦してみてください。
まとめ
最後にポイントをまとめます。
- 「なで肩・いかり肩」は肩甲骨の位置のずれ。
- 猫背になると「なで肩」になりやすい。
- 胸を張るクセがつくと「いかり肩」になりやすい。
- 「なで肩・いかり肩」を根本から改善するには、姿勢矯正をする必要がある。