悪い姿勢になると「力みやすく」なる。姿勢と緊張との関係

姿勢と健康
tora

はい、質問のお手紙が届いています。

mike

はいはい。

???

 日常的に力みやすい事を悩んでいます。スポーツジムに通っていますが、指導員に「力を抜いて」と言われてしまう事が多く、リラックスしようとしてもうまくいきません。「肩が上がっている」とも言われるので、姿勢も関係していると思うのですが、力みやすい姿勢のようなものはあるのでしょうか。 

tora

悪い姿勢とからだの緊張についての質問ですね。

mike

確かに悪い姿勢になるとからだは緊張して力みやすくなります。ここではその理由と改善方法について考えていきましょう。

目 次

「力みやすさ」は重要なからだの問題

 「力みやすさ」は健康上の問題としてあまり取り上げられませんが、私個人は様々な症状の根っこにある重要な問題だと考えています。

 「力んでいる状態」とは、言い換えれば「つねに筋肉が緊張している状態」ですから、様々なからだへの影響が考えられます。

  • 硬く緊張した筋肉により血行が阻害されてコリやむくみの原因になる。
  • 柔軟性のない筋肉は、想定外の動きをしたときにケガをしやすい。特にぎっくり腰などの原因になる。
  • 疲労しやすい。
  • 呼吸が浅くなる。その結果、心理的にも悪影響を引き起こす可能性がある。

 実際私の治療室でみるかぎり、慢性的な腰痛・肩こりなどの症状をもっている方は、力みやすくリラックスする事が苦手な場合が多いようです。

 このようなことから「力みやすさ」は是非とも改善すべきなのですが、意識的に「力みやすさ」を改善するのは非常に困難です。

 なぜなら「意識的に何かをする」という行為は、基本的に「力む」事だからです。

 例えば、「掃除をしよう」と考えたとしましょう。掃除をするには当然からだを動かしますから「力む」必要があります。では「勉強をしよう」はどうでしょうか。これもやはり同じです。何故なら勉強は脳を力む(機能させる)事だからです。

 つまり「力まないようにしよう」と意識すると、「力まないように力む」という矛盾が発生してしまうのです。このような事から、「力まないように」と考えれば考えるほど、逆に力んでしまう場合が多いのです。

 このように「力みやすさ」を意識的に改善するのはかなり難しい行為です。ですから少し考え方を変えてみましょう。

からだそのものを、力みずらい状態に変えてしまうのです。

 そこで注目するのが姿勢です。悪い姿勢は「力みやすさ」と深く関係しています。ですから姿勢矯正をすれば、意識しなくても自然に力みやすさを改善する事ができるのです。

 力みやすくなる三つの姿勢変形

 悪い姿勢は「力みやすさ」と深い関係がありますが、その中でも特に力みやすさと関係する姿勢の変形があります。ここでは代表的な三つを紹介しましょう。

  1. アゴ上がりの変形
  2. 全身の反り返り変形
  3. 胸を張る変形(いかり肩変形)

1.アゴ上がりの変形

 生物には「反射」と呼ばれる働きがあります。反射とは特定の刺激に対してある一定の反応をする働きです。例えば身体検査などで、膝をコツンとたたくと足がビクンと動きますが、これも「反射」の一種です。

 同様に姿勢にも「反射」に近い働きがいくつかあります。特に頭の姿勢変化にからだは過敏に反応します。頭には目や耳などのセンサーが集中してますから、つねに安定した状態であるよう全身が反射的に動くようになっているのです。

 そして頭の姿勢変化の中でも特に「力みやすさ」と関係しているのは「アゴ上がり」変形です。アゴが上がると反射的に背中全体が緊張するという働きがあるからです。

 そしてこの「アゴ上がり変形」は、猫背姿勢にほぼ必ず伴います。

 その理由を簡単に解説しましょう。

 上図は、猫背になると頭がどのように動くのかを示した図です。右のように肩を丸めて猫背になると、自然に頭は下に傾きます。しかし、このままでは目線は下がったままで、前を見る事はできません。

 そこで正面を見る為に上図右のようにアゴをあげる事になります。つまり、猫背になるほどアゴも上がる事になり、その結果「反射」の働きで背中が緊張して、力みやすくもなるのです。

2.全身の反り返り変形

 悪い姿勢になると、必ず全身は反り返るように変形をします。そうなる理由については以下の記事で詳しく解説していますので詳しい理由はここでは省きます。

 

 上図は、姿勢の変化による筋肉の緊張度合いを模式的に示した図です。左の正しい姿勢に比べて、右の反り返った姿勢(ここでは胸突き出し姿勢)の背中が上下に縮んでいる事がおわかりになるでしょうか。

 筋肉は縮む事で緊張状態となります。その為、背部を中心に力みやすくなるのです。

3.胸を張る変形(いかり肩変形)

 胸を張った状態のまま固まった姿勢を「胸つき出し姿勢」といいます。

 実は悪い姿勢の中で一番「力みやすい」姿勢が、この胸つき出し姿勢なのです。その理由は胸を張った状態を保つには全身の筋肉を緊張させる必要がある為です。

 又、胸を張る事で肩甲骨は背中に寄り「いかり肩」となります。すると肋骨の運動が阻害され呼吸が浅くなり、心理的にも緊張状態になりやすくなります。

 この胸つき出し姿勢は決して珍しい姿勢ではありません。特に女性の場合、悪い姿勢である方の約半数はこの胸つき出し姿勢です。ですから女性で力みやすい方は、本人は気づいていなくてもこの「胸つき出し姿勢」である場合がとても多いのです。

男女別悪い姿勢の比率グラフ
男女別悪い姿勢の比率のグラフ。女性は「胸つき出し姿勢」が半数を占める。

「力みやすさ」を改善する方法

 以上、悪い姿勢と「力みやすさ」の関係を解説しました。もちろんホルモンバランスや心理的な性質など、姿勢以外にも原因はありますが、もし明らかに悪い姿勢であるのならば、なんらかの形で「力みやすさ」に姿勢が関与していると考えて間違いありません。

 ですから力みやすく悪い姿勢でもある方には、姿勢矯正はお勧めです。

 しかし矯正には時間がかかりますので、まずは以下の二つの事をチャレンジしてみましょう。それだけでもある程度「力みやすさ」を改善できると思います。

  • 胸を張るクセをやめる
  • 後頭部を柔らかくする

 胸を張るクセをやめる

 もし普段から胸を張るクセがあるならば、それをやめる必要があります。しかし胸を張るクセは、大抵の場合本人は気づいていません。猫背とは異なり見た目から「胸の張るクセ」を判別するのは意外に難しいのです。

 そこで自分の呼吸を意識してみると、「胸の張るクセ」の有無を判別することができます。

 正常な姿勢である場合、呼吸運動には腹筋が主に使われていてますから、呼吸の度に腹筋が動くのを確認する事ができます。

 一方、胸を張るクセのある場合、呼吸運動に肩から胸の筋肉が主に働いています。ですから呼吸の度に肩が上下していて、腹筋がほとんど働いてない場合は、胸を張るクセのある可能性が高いのです。

 胸を張るクセを改善するには、肩から力を抜くことが重要です。その為に、お腹をへこませるように軽く背中を丸めて頭を直立させるようにします。そうした状態で呼吸が深く吸えるようになったら、正しい姿勢になった証拠です。

 もし違和感のある姿勢だと感じたら鏡で確認してみましょう。大抵は自分で思うほどおかしくありません。もしおかしく見えたなら、そう見えない程度だけ軽く姿勢を整えるだけでも十分効果はあります。

 後頭部を柔らかくする

 力みやすい方にほぼ共通してあるのが「後頭部の緊張」です。そこで後頭部を柔らかくする運動をしましょう。その為に最適な運動は以下の記事で紹介しています。

 紹介した運動は姿勢矯正を目的としたエクササイズですが、後頭部を柔らかくするのに最適な運動でもあるのです。是非チャレンジしてみてください。

まとめ

mike

力みやすさと姿勢との関係について解説しましたが、いかがでしたでしょうか。

tora

僕もリラックスしようとして逆に緊張してしまうことはよくあるから、参考になった。

mike

「力みやすさ」を解消するのは、実はかなり難しい事なんです。悩んでいる方は一度自分の姿勢をチェックしてみられることをお勧めしますよ。

 最後にポイントをまとめます。

  • からだの健康において「力みやすさ」は大きな問題。
  • 「力まないようにしよう」と意識しても「力みやすさ」は改善しない。
  • 姿勢矯正をすれば、からだそのものが力みずらくなるので、特別な意識をしなくても「力みやすさ」を改善できる。
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