今回は産後に見られる典型的な姿勢の矯正例を紹介します。
産後に見られる姿勢? どんな姿勢なの?
ではさっそく今回矯正に挑戦するFさん(仮)を紹介しましょう。
Fさん(仮): こんには。産後の腰痛がひどくて来院しました。姿勢も少し気にはなっていたのですが、それが直接の原因とは考えていませんでした。
では、Fさん(仮)の姿勢を見て見ましょう。
確かに今まで見た例に比べると、お腹とお尻が目立っているね。
この「極端な反り腰」こそ産後に見られる典型的な姿勢変形なのです。
産後に見られる典型的な姿勢変形、「極端な反り腰」
Fさん(仮)は2歳のお子さんがいる33歳の女性です。最近腰痛が悪化して私の治療室にいらっしゃいました。Fさん(仮)の姿勢を見ると、お腹が突き出て背中が大きく反っている事がわかります。姿勢の分類としては「腰つき出し姿勢」ですが、下腹部とお尻の見え方が特徴的です。
写真に補助線をいれて腰回りの変形をわかりやすくしたものが上図です。下腹部がポッコリしていて、お尻が後ろ側に跳ね上がっている事がわかります。
このような状態になった原因は、骨盤が前に大きく前に傾いてしまった為です。
上図は骨盤の角度による腰回りの見え方を比較した模式図です。右のように骨盤が前に傾いた状態になると、お腹が骨盤からこぼれ落ちてきて、お尻が後ろに突き出た状態になる事がわかります。
このような骨盤が前に傾いた姿勢を「反り腰」と言います。「反り腰」は猫背を含む他の悪い姿勢でも見られる変形ですが、下腹部がこぼれ落ちて見えるほど強い「反り腰」は、産後の女性に多く見られる特徴です。
なぜ産後にこのような変形がおきるのでしょうか。それは妊娠中の姿勢変化に主な原因があります。
妊娠すると、赤ちゃんが大きくなるにつれお腹は自然にふくらんできます。
上図は妊娠中の姿勢変化を示した模式的図です。水平に引かれた黒線と赤い三角印は、からだの水平バランスを示すテコを模式的に示しています。妊娠してお腹が大きくなると、赤ちゃんは重りとして作用する為にからだが不安定になります。テコの原理で言えばお腹側のテコの腕が長くなった状態です(図左)。そこでテコの支点にあたる背骨の位置を中央にずらす為に骨盤が前傾するのです(図右)。
通常出産した後は元の状態に自然に戻ります。しかし、産後も元に戻らずそのままの状態になってしまう場合があるのです。
そうなる理由としては、出産の影響により腹筋に力が弱まった事、妊娠前から姿勢に何らかの問題があった事などがあげられます。
Fさん(仮): 妊娠前から腰痛はあったのですが、そこまで慢性的ではありませんでした。でも妊娠中からひどくなり、それが産後も続いている状態です。
妊娠中の腰痛も、産後に「反り腰」が続いてしまう原因の一つです。ただFさん(仮)の背中の丸まり具合を見ると、もしかしたら妊娠前から悪い姿勢であった可能性が高いと思います。
Fさん(仮): 確かに以前から少し猫背ぎみだったと思います。
そうであれば、姿勢矯正をすれば反り腰も自然に緩和されて腰痛も改善するでしょう。
Fさん(仮):腰痛が治るなら、姿勢矯正でもなんでもやります!!
では一緒に頑張ってみましょう!
矯正3カ月後
Fさん(仮)の治療計画は、週一回の施術と自宅での一日3分のエクササイズです。施術は「反り腰」の矯正を中心に行いました。そうして三カ月過ぎた状態が下の右写真です。
おー、お尻とお腹が見事にへっこんでるね。背すじも伸びてる。
Fさん(仮):腰痛もなくなりました!!
写真の左が矯正前、右が矯正後です。写真を見ると極端な「反り腰」がほぼ改善され背中もすっきりしている事がわかります。腰痛を含めて症状もほぼ改善しましたので、施術はおしまいにして後は自宅でエクササイズを続けてもらう事にしました。
まとめ
では、Fさん(仮)に矯正の感想をお聞きしましょう。
Fさん(仮):腰痛が完全に良くなっただけでなく、お腹もへっこんで言うことなしです!!
産後の「反り腰」変形は、そのままにしておくと少しづつ悪化していきますので、産後三カ月ほど過ぎたら、以下のポイントをチェックするとよいでしょう。
- 骨盤が大きくなったまま元に戻らない。
- 体重はさほど変化ないのに、妊娠前より下腹が目立つ。
- 腰痛が慢性化している。
- 下半身がやたらと張る、冷える。
以上のポイントに3つ以上当てはまる方は、一度自分の姿勢をチェックしてみると良いと思います。