ここでは腰痛と姿勢との関係を解説していきます。
悪い姿勢になると腰痛になりやすいの?
はい。肩こりに並んでなりやすい症状です。
悪い姿勢による代表的な症状の一つ、それが腰痛です。
もちろん、疲労やケガ、椎間板ヘルニアなど、悪い姿勢以外にも腰痛の原因は沢山ありますが、特に原因が思い当たらず症状が慢性的である場合は、悪い姿勢が関わっている可能性は高いと思います。
悪い姿勢による腰痛には以下の三つのパータンがあります。
- 筋肉の緊張による腰痛
- 関節の炎症による腰痛
- からだのゆがみによる腰痛
これら三つのパターンの腰痛を解説しながら、悪い姿勢と腰痛との関係を解説していきます。
ここでの記載内容は各種文献と著者の治療室における統計分析に基づいた一定の信頼のおけるものですが、症状の原因は個人により様々です。症状が深刻な場合は、まず最初に専門の医療機関で診断を受けるようにしましょう。
筋肉の緊張による腰痛
まずは、筋肉の緊張による腰痛からみていきましょう。
これは悪い姿勢になると腰回りの筋肉が強く緊張する事が原因です。
なんで悪い姿勢なると、腰の筋肉が緊張するの?
それは、悪い姿勢になると必ず「全身が反り返る」からです。
猫背を含めて全ての悪い姿勢には、共通の変形があります。それは「全身の反り返り」です。
上の図をご覧ください。図は、三つの悪い姿勢のかたちを模式的に示したものです(一番左は正しい姿勢)。図の赤線はからだの中心を示しています。
腰部分の色のついた部位に注目してください。一番左の正しい姿勢ではからだの中央にしっかり線が通っています。しかし右3つの悪い姿勢では、線は中央ではなく、背中よりにずれた位置を通っている事がわかります。このずれは、全身が反り返る事でお腹が前に突き出ている事を示しています。
これが悪い姿勢共通の変形、「全身の反り返り」です。詳しくは以下の記事を参考にしてください。
この全身の反り返りは、多くの場合腰のつけねを頂点として変形します。このような状態を「反り腰(そりごし)」と言います。
この反り腰が、腰の筋肉の緊張の直接的な原因です。
下図をご覧下さい。図は、正しい姿勢と悪い姿勢(反り腰の姿勢)における腹筋と背筋のバランスを模式的に示したものです。
図左の正しい姿勢では、腹筋と背筋は同程度の力を発揮していて、安定して姿勢を保持しています。
しかし図右の反り腰の姿勢では、腰が弓なりになる事で背筋が収縮して、筋肉が緊張した状態になっています。(逆に腹筋は引き延ばされて弛緩している点も注意)。
このような状態が続けば、筋肉に疲労が蓄積して、いずれ腰痛になってしまうのです。
筋肉の緊張による腰痛には以下のような特徴があります。
- 痛みの範囲が広く、腰回り全体に痛みを感じる。
- 痛みの質は「鈍い重い痛み」。
- 顔を洗う時など、中腰になると痛む。
- からだの動かし初めに強く痛みを感じるが、しばらく動いていると和らいでくる。
以上のような特徴に当てはまるなら、その腰痛の原因は、腰の筋肉の緊張である可能性が高いと言えます。
つまり、悪い姿勢になると反り腰になるから、腰の筋肉が緊張して、腰痛になるって事?
その通りです。そして反り腰は筋肉の緊張だけでなく、別の問題も引き起こします。
え? まだ他にもあるの?
関節の炎症による腰痛
実は、関節の炎症による腰痛も、反り腰が原因なのです。
両方とも反り腰が原因なの?
「反り腰」は筋肉だけでなく腰の関節のストレスを高める原因でもあります。
上図は、反り腰になると腰骨の位置関係がどのように変化するのかを示しています。丸で囲んで拡大している部分は、腰骨とおしりの骨(仙骨)のつなぎめを示しています。
図を見ると、右の反り腰の姿勢では、左の正しい姿勢と比べて腰骨のつなぎめでより折れ曲がっている事がわかります。
このように折れ曲がった状態になると、関節は締め付けられた状態になります。その結果、ストレスが高まり関節に炎症が引き起こされ、腰痛になってしまうのです。
関節の炎症による腰痛には以下のような特徴があります。
- 痛みの範囲がピンポイント。主に腰のつけねに痛みが集中する。
- 痛みの質は「鋭い痛み」。
- 長時間同じ姿勢をしていると痛くなりやすい。特に長時間座り姿勢、立ち姿勢をしていると痛む。
- からだを反らすと痛みが強まる。
つまり、反り腰は腰痛の大きな原因なんだね。
その通りです。関節も筋肉も原因は同じ反り腰ですから、症状は重複する場合も多いのですが、初期は筋肉の緊張による痛み、そして長期化すると関節の痛みが現れる場合が多いようです。
又、腰痛だけでなく、反り腰は「足のしびれ」の原因になっている場合もあります。
それって神経痛?
いえ、神経痛ではなく、下半身の筋肉が緊張した事によるしびれです。詳しくは以下の記事を参考にしてください。
そっか。びっくりした。どっちにしても反り腰には要注意だね。
からだのゆがみによる腰痛
そして、最後に紹介するのが、からだのゆがみによる腰痛です。
悪い姿勢の話じゃなかったの?
悪い姿勢も関係しているので、ここで紹介します。
次に紹介するのは、「からだのゆがみ」による腰痛です。悪い姿勢と深く関係している為、ここで紹介しておきましょう。
からだのゆがみは三種類あります。一つは悪い姿勢で、残り二つが「左右のゆがみ」と「前後のゆがみ」です。これらの違いと特徴については以下の記事で詳しく解説していますので、興味のある方は参考にしてください。
そしてこれらの内、腰痛と深く関係しているのが「前後のゆがみ」です。
「前後のゆがみ」とは、からだを横から見た時のバランスのくずれで、悪い姿勢の延長線上にあるゆがみです。
では、具体的に「前後のゆがみ」とはどのような状態なのか、悪い姿勢と比較しながら実例で見てみましょう。下の写真をご覧下さい。
上の写真は、左右ともに首猫背(くびねこぜ)姿勢の方の写真です。首猫背とは首から肩が丸まっている姿勢です。
腰の部分に注目すると、両者ともに「反り腰」になっている事がわかります。ぱっと見ただけでは同じ状態に見えるかかもれしません。
とは言ってもわかりずらいですから、背中に線を引いてわかりやすくしてみます。
上は、さきほどの写真に背中の曲がり方を示す赤線を付け加えたものです。
首から肩にかけては、両者にほとんど違いはありません。しかし、腰に注目すると、右の前後のゆがみのある方は、反り腰の角度がより鋭角である事がわかります。
さらにわかりやすくする為に、写真から線だけ取り出してみましょう。
上図は、背中の形を示した線のみを取り出して、背中の丸い程度(図中A)と反り腰の程度(図中B)を角度として示しています。
ゆがみのない左の方は、背中の丸まり(A)と反り腰(B)の程度がほとんど同じです。これは、上半身と下半身がバランスを合わせながら変形している事を示しています。このように悪い姿勢とはいっても、一定の安定を保ちながら変形するのが普通なのです。
一方、ゆがみのある右の方は、背中の丸まり(A)に比べて反り腰(B)の角度が鋭角で、より不安定な状態である事がわかります。
つまり、悪い姿勢よりさらに不安定になった状態が、「前後のゆがみ」のある状態なのです。
基本的に前後のゆがみは「反り腰」をより強めるように働きます。
そして反り腰が強まれば、当然腰痛になる確率も高まります。下のグラフをご覧ください。
グラフは著者治療室の統計データにから分析した前後のゆがみと腰痛との関係を示したものです。
グラフの横軸は前後のゆがみの程度、縦軸は腰痛を訴える人の比率を示しています。前後のゆがみの程度に比例して腰痛の比率も高くなる事がグラフからはっきりわかります。
からだのゆがみによる腰痛には以下の特徴があります。
- 腰全体が強く痛む。
- 症状は慢性的で、つねに痛みがある。
- 関節と筋肉の両方が痛む。その為、普段は重だるく、時に鋭く痛む。
- 足の神経痛はない。
症状は一番ひどいんだね。
反り腰がより強まるのですから、当然一番強い症状を引き起こします。
つらそうだ・・・
実際つらいです。普段から重だるい腰痛を抱えていて、たまにぎっくり腰繰り返すような方は、このケースである場合が多いですから、注意しておきましょう。
まとめ
以上、悪い姿勢と腰痛との関係を解説してきました。
要は「反り腰」が諸悪の根源だという事だね。
そうです。ですから、姿勢矯正をして反り腰が改善されれば、ほとんどの場合腰痛も改善されます。これはからだのゆがみのある場合も同様です。
なるほど。慢性的な腰痛に悩んでいる人は、反り腰になっているかどうかだけでもチェックしてみるといいかもね。
その通りです。
最後にポイントをまとめます。
- 腰痛は、肩こりに並ぶ悪い姿勢の典型的な症状。
- 悪い姿勢による腰痛は、基本的に慢性痛。
- 特に原因が思い当たらず、症状が慢性的である場合は悪い姿勢の関与が疑われる。
- 悪い姿勢による腰痛には、筋肉の緊張による腰痛、関節の炎症による腰痛、からだのゆがみによる腰痛の三つのパータンがあるが、その根本の原因は「反り腰」にある。