最近、肩が丸まって見える事が気になるんだよね。
それは「巻き肩」とも言われる状態ですね。
やっぱりこれを矯正するには肩を背中に引き寄せるトレーニングをすればよいのかな?
いえ、それをやるとよけいにひどくなりますよ。
え? どうして?
肩の丸まって見える状態は「巻き肩(まきがた)」とも言われ、肩関節が前面にずれたように見える姿勢の変形です。悪い姿勢になると典型的に現れて、だらしなくも見えますので気にされている方も多いでしょう。
このような「巻き肩」なる原因はどこにあるのでしょうか。
当然肩にある、と思われるかもしれませんが、実はそうではありません。原因は背中にあるのです。
この章では、巻き肩になるしくみと、その改善方法を解説しましょう。
背中が丸く変形すると、巻き肩に”見える”ようになる
肩が丸く「巻き肩」になる原因は、肩そのものにはあるわけではありません。実は背中が丸くなり猫背になった結果、巻き肩に”見える”ようになるのです。
つまり、巻き肩はあくまで「見え方」の問題で、肩そのものの変形ではありません。
これは文章での説明は難しいですから、図を見ながら解説していきましょう。下図は、巻き肩を気にしている患者さんの写真をわかりやすく加工したものです。
上図を見ると、確かに肩が前方にずれているように見えます。しかしそう見えているのは錯覚で、実は肩の位置は正しい位置のままなのです。下の図を見てみましょう。
次に、先ほど示した実例にも同様の線を引いてみましょう。
上図を見ると、頭と背中は中心線よりずれていますが、やはり肩の位置はからだの中心にとどまっている事がわかります。
つまり巻き肩は、肩そのものが変形したわけではなく、背中が変形した事で相対的に肩が前方に移動したように見える現象なのです。※1。
※ここでは「肩の位置はずれない」と解説していますが、姿勢の変形が強い場合は、押し出された背骨によりに肩甲骨が外側に押し出され、前方に肩がずれる場合もあります(詳しくはこちらでも解説しています)。しかしどちらにしても、その根本原因は背中の変形にある事に違いはありません。
肩を背中に引き寄せると巻き肩が悪化する理由
ここまでの解説で、巻き肩の根本原因は肩そのものではなく背中の変形にある事はご理解いただけたと思います。
しかし、この事実はあまり知られておらず、多くの方は「巻き肩は肩の変形」だと考えています。その為、巻き肩を矯正しようとして「肩を背中に引き寄せる」努力をされる方が後を絶ちません。これが間違いである事は、ここまで読まれた方にはおわかりだと思います。
このような肩を背中に引き寄せる試みは、巻き肩が矯正されないだけではなく、別の問題を引き起こす場合があります。
肩を背中に引き寄せる事が習慣になると、巻き肩はより悪化して、さらに姿勢も悪くなってしまう場合があるのです。
そうなる原因は、「肩を背中に引き寄せる」動作が「胸を張る」動作とほぼ同じである事に起因します。
今これを読まれている方は、よろしければ実際に肩を背中に引き寄せてみましょう。自然に胸を張った姿勢にもなる事がお分かりいただけると思います。
実は、胸を張る事も、猫背と同様に「巻き肩」になる大きな原因なのです。
そうなる理由は猫背の場合とほぼ同様です。
胸を張る動作は、言い換えれば「胸を上に突き上げる」動作です。胸が突き上がると、肩周辺の背骨は背中側に押し出されるように動きます。その結果、猫背と同様に巻き肩に見えるようになるのです(下図参照)。
このような事実を知らずに肩を背中に寄せる習慣を続けていると、いずれその形で姿勢は固定されてしまいます。その結果、巻き肩はより悪化して、さらに胸を張った状態で固まった姿勢である「胸つき出し姿勢」と呼ばれる姿勢になってしまうのです。
実はここまであえて記述しませんでしたが、巻き肩を気にしている方の多くは、猫背の方ではなく、胸を張った状態で固まった「胸つき出し姿勢」の方なのです。
猫背の方は背中の丸さが一番目立っている為、巻き肩はあまり目立たず、本人もあまり気にする事はありません。しかし、「胸つき出し姿勢」の方の場合、巻き肩以外に目立って悪い部分がない為、巻き肩がより気になりやすいのです。
その為「胸つき出し姿勢」の方は、「巻き肩に見える → 気になってより胸を張る → より変形(以下繰り返し)」という悪循環に陥っいってしまう場合がよくあります。
巻き肩を矯正する方法
ここまで巻き肩について解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。
巻き肩の根本原因は背中の変形なんだね。ということは、巻き肩を矯正するには・・・
そうです。背中を矯正するしかありません。
巻き肩は、肩そのものが変形したわけではなく、背中が変形した事により相対的にそう見えるだけの現象です。
つまり背中を矯正すれば、巻き肩も自然に矯正されるのです。
その為には、以下で紹介する姿勢矯正エクササイズが最適です。巻き肩を気にされている方は是非チャレンジしてみましょう。
又、肩周辺組織も硬くなっている場合もありますから、以下に紹介するストレッチを合わせて行うのも効果的です。
- 伸ばす側の肘を壁につけます(下図左)
- 肘を壁につけたまま、全身を前に踏み込みます(下図右)。
- そのまま30秒維持します。
- 次に反対側の手で、同じ事をします。
上のストレッチを姿勢矯正エクササイズに合わせて行えば、さらに矯正効果を高める事ができるでしょう。
まとめ
以上、巻き肩について紹介しました。いかかでしたでしょうか。
からだ全体で見れば、巻き肩も悪い姿勢の一部という事だね。
その通りです。姿勢全体を矯正すれば、巻き肩も自然によくなりますので、みなさんも姿勢を見る時には全身をチェックするようにしてください。
最後にポイントをまとめておきましょう。
- 巻き肩は背中が丸くなった事による二次的な変形。
- 巻き肩を矯正しようとして、肩を背中に引き寄せる習慣が身につくと、巻き肩が改善されないだけでなく、胸つき出し姿勢になってしまう場合もある。
- 背中を矯正すれば、自然に巻き肩も改善される。