親になると子供の心配事は絶えないものです。自分の事であれば気にならないような事でも、子供の事だとつい不安になってしまうのはよくある事だと思います。そして、そのような親の心配事の一つに「子供の姿勢」があります。
実際、子供の姿勢についての問い合わせは私の治療室でも年々増加しています。時間が経つほど姿勢は悪くなる傾向がありますから、出来るならば早めに矯正すべきではないかと心配される気持ちはよくわかります。
しかし実は、子供の姿勢は大人とは異なる点が多くあります。例えば悪い姿勢であっても気にせずそのままで良い場合もあるのです。そこでここでは、子供の姿勢について少し詳しく解説していきましょう。
子供の成長は早い為、その成長段階により姿勢の特徴も大きく異ります。そこでまずは、子供の年齢別に姿勢の特徴を解説していきましょう。
幼児期はあせらずに姿勢を見守る
最初は10歳ぐらいまでの幼児期です。この頃は骨格もまだ未成熟で、からだは急成長しながらつねに変化しています。その為、成長に合わせて姿勢もころころと変化しています。
例えば5歳ぐらいまでは、全身を大きく反らす姿勢をしている子供をよく見かけますが、これは成長過程で、しばらくすればほとんどの場合正常に戻ります。
又、足のかたちも幼稚園ぐらいまではO脚になったりX脚になったり変化を繰り返す場合がありますが、これも極端なケースを除けば、いずれ正常に戻るのです。
このような事から幼児期における姿勢は、極端な場合を除いてあまり心配せずおおらかな目で見守るのが良いと思います。
小学生まではからだを動かす事が大事
次は10〜12歳の小学校高学年ぐらいまでの時期です。
この時期ぐらいから姿勢の悪い子供がちらほらと目立つようになります。とは言え、まだ矯正を考えるには時期尚早です。幼児期ほどではないにせよからだは急速に発達中ですから、仮に矯正をしてもからだの成長がそれを打ち消してしまうからです。
しかし、極端に姿勢が悪かったり、慢性的な肩こり腰痛・頭痛などの症状がある場合は、一度専門家に見てもらうのも良いかもしれません(最近このようなケースが少しづつ増えてきています)。
そういった極端なケースを除けば、この時期に注意べき点は姿勢を支える筋肉がしっかり発達してきているかどうかです。
普段からあまり外で遊ばずに家にいる事が多いような生活をしていると、姿勢を支える筋肉の発達が弱くなり、その後の姿勢を崩す要因になります。
とは言っても、大人のようにわざわざ筋力トレーニングをする必要はありません。外で遊ぶ時間を増やたりして、からだを動かす時間を意識的に増やしてあげるのがオススメです。
中学〜高校は悪い姿勢になりやすい時期
次は、中学生から高校生にかけての13〜18歳くらいの時期です。この時期は以下の3つの要因により特に悪い姿勢になりやすい時期です。
からだが成人と同じになる
骨格に限って言えば、ほぼ成人と同じにまで成長するのがこの時期です。その為、姿勢の崩れがからだに蓄積しやすくなっています。
生活習慣が一定化する
この時期くらいから生活様式も大人とほぼ同じになります。その為、姿勢を崩す原因となる生活習慣(背中を丸めて勉強したりスマホを見たりするクセなど)も大人同様になり、姿勢を少しづつ悪化させます。
心理的な問題による姿勢悪化
思春期は心理的にも揺れ動きやすい時期です。心理的な不安定は姿勢に大きな影響を及ぼす場合があります。
以上3つの要因から姿勢が崩れやすいだけでなく、この時期に一旦悪い姿勢になると、ほとんどの場合成人後もそのままであり続けます。
しかし逆に考えれば、この時期に悪い姿勢にならないよう注意できれば、成人後にも姿勢について悩まされる可能性はぐっと少なくなるとも言えます。
家庭でできる子供の姿勢への対処法
ここまで子供の発達段階別に姿勢の特徴を解説しました。次は、家庭でできる3つの対処法を紹介しましょう。
1.生活習慣の改善
大人はもちろん子供にとっても日常の生活習慣は姿勢を崩す大きな原因です。
その中でも「肩を丸める」クセには特に注意が必要です。スマートフォンを見たり本を読んだりしている時などに子供にも頻繁に見られるクセだからです。
このようなクセが習慣化してしまうと、いずれそれを悪い事とも感じなくなります。そうなる前に、注意してやめさせる事が重要です。
「姿勢を正しなさい」とただ言っても、子供はどうしてよいのかわかりません。例えば「背もたれに背中をくっつけなさい」「おしりは深くすわりないさい」「足は前に出して足裏全体を床につけなさい」「本(スマートフォン)のほうから顔に近づけなさい」などとできるだけ具体的に指摘してあげる方が効果的です。
又、作業環境にも注意しましょう。長時間座る場所がソファのように柔らかい座面だと、背中は自然に丸まりやすくなります。できるだけお尻の沈み込まない固めの座面のある椅子に座らせるようにしましょう。又、机と椅子の高さにも注意するのも効果的です。
2.適度な運動をする習慣を身につける
姿勢を支える筋肉の発達の弱い子供が最近増えています。
背中と肩を丸めて下腹をぽっこりつき出し、みぞおちを少しへこませたような姿勢が筋肉の発達の弱い子供の姿勢の特徴です。
このような特徴が見られる場合、子供にからだを動かす習慣を身につけさせる必要があります。
姿勢を正す目的には、特定の筋力だけを強化するトレーニングはあまり効果はありません。全身をまんべんなく動かす運動、例えば積極的に外で遊ぶようにしたり、スポーツを習わせたりする方が効果的です。
3.矯正エクササイズを行う
お子さん自身に姿勢を正したいという意志があるならば、こちらで紹介している姿勢矯正エクササイズを覚えて行うのは、最良の方法の一つだと思います。運動のやり方が正しいかどうかは親御さんが確認してあげましょう。できれば、お子さんと一緒にやるのも良いでしょう。
以上、家庭でできる3つの対処法を紹介しました。
これら以外にも、姿勢矯正ベルトのような矯正器具を使うという手軽な方法もあります。しかし、そういった装身具は長時間つけたままにすると背中の可動性が低下するなどの副作用もありますので、悪い姿勢になりやすい時に短時間のみ使用するのがお勧めです。
又、すでにお子さんの姿勢がかなり悪い場合は、矯正治療を受けるのもお勧めです。迅速な矯正効果はもちろんですが、正確な姿勢指導を受けられる事が治療を受ける最大のメリットです。
治療院を選ぶ時には、お子さんと共に来院して、説明をしっかり聞いてから治療を受けるか判断するようにしましょう。ちなみに私の治療室は以下になります。
姿勢に関心をもてるかどうかが矯正の成否をきめる。
ここまで子供の姿勢の特徴について詳しく解説してきました。子供の姿勢が大人と異なる点の多い事がおわかりになりましたでしょうか。
大人であれば、悪い姿勢が問題である事は少なからず誰でも自覚しています。
しかし子供自身が悪い姿勢を問題として自覚している場合はほとんどありません。つまり子供は、姿勢を矯正したいという自発的な気持ちの無い事が普通なのです。
たとえ子供であっても、姿勢矯正をするには本人自身の継続的な努力が必ず必要となります。その為、姿勢に対しての関心を子供に持たせる事ができるかどうかが、子供の姿勢矯正の最大のポイントになります。
例えば「悪い姿勢だと周りからの印象が悪いよ」、「大人になってから姿勢を正そうとしても大変だよ」、「姿勢が悪いと、大人になった時に、様々な健康上のリスクがあるよ」などをわかりやすく話してあげるとよいでしょう。
又、「有名なサッカー選手で姿勢の悪い人はいないよ。」「悪い姿勢だと呼吸が浅くなるから楽器演奏するプロにはなれないよ」などと子供のもつ関心事と結びつけて説明してあげるのも効果的です。
そのような努力をしても、子供が自分の姿勢に対して関心をもてない場合は、とりあえず今は姿勢矯正を諦めるのが得策かもしれません(極端に姿勢が悪かったり腰痛・肩こり・頭痛などの症状がある場合は除いて)。確かに心配ではありますが、無理矢理やらせても失敗する確率が高いからです。
もちろんできるだけ早めに矯正する方が合理的なのは確かですが、そこまであせらなくても20代くらいまでは矯正期間にさほど大きな違いはありません。
ですから、本人が姿勢に興味を持つタイミング(多くの場合年齢が上がるにつれて興味が高まります)を見計らって、再度姿勢矯正を考えるのも良い選択だと思います。
まとめ
最後にまとめです。
- 幼児期はあまり姿勢を気にしなくてよい。
- 小学生までは姿勢を支える筋肉を鍛える為、全身を動かす習慣を身につけさせる事が重要。
- 中学・高校ぐらいから姿勢矯正を検討する。
- 生活習慣の注意はできるだけ具体的に。
- 子供に姿勢への関心を持たせられるかどうかが矯正の成否を決める場合が多い。
- 子供が姿勢に関心をもてない場合は、あせらずに時期を待つのも手。