ここでは胸を張る姿勢と猫背との関係について解説したいと思います。
え? 見た目に関係があると思えないけど?
確かにそう見えますね。ところが、胸を張る姿勢と猫背はとてもよく似た姿勢なんです。
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胸を張った姿勢と猫背は、一見するとまったく異なる姿勢に見えます。しかし、実はとても似通った姿勢なのです。
ここではこのまったく無関係に見える二つの姿勢の共通点について解説していきましょう。
胸を張るとは胸を突き上げること
まずは胸を張る姿勢について少し詳しくみていきましょう。
上図左は典型的な胸を張った姿勢の写真です。わかりやすいように背中の形に合わせて線を引いてあります。右は模式図です。
上図から単純に明らかになるのは、胸を張る姿勢の背中は真っすぐではない、という事実です。真っすぐなのは首から肩だけで、肩から胸にかけては大きく内側に傾いています。
次に実際の背すじの伸びた姿勢と比較してみましょう。
それは自分で実際に胸を張ってみればわかります。意識的に大きく胸を張ってみて下さい。背中中央が強く緊張して、斜め上に胸が突き上がる事がわかるはずです。模式図で示すと下のような動きになります。
さらに詳しい事は以下の記事を参考にしてください。
このように胸を張る姿勢が「胸を上に突き上げた姿勢」だとすると、これとよく似たかたちの姿勢があります。それが、実は猫背なのです。
胸を張る姿勢は隠れ猫背
実は、猫背と胸を張る姿勢は、背中の形だけで比較すると、ほとんど同じ姿勢なのです。おかしな事を言っていると思われるかもしれませんが、これは事実です。
まずは胸を張った姿勢と猫背を図で比べてみます。
しかし、そう見えないのは「姿勢」を「形」として見ていないからです。
人間の目は既成概念にとらわれやすい為、ものの形を見ることが苦手です。例えばアルファベットのL字を例にみてみます。
さてここで問題です。アルファベットのLの字は、角度を変えて見ても同じ「L」に見えるでしょうか。
実際にやってみましょう。まずは、左に45°回転させてみます。
どうでしょうか。ひらがなの「く」の字に見えませんか?
このように見る角度が変化しただけで別の文字に見えるようになります。
そしてさらに、図を45°回転させましょう。
今度は^記号(キャレット記号)に見えてきました。
このように、同じ形でも角度が変わったり見る方向が変わると、まったく別のものに見えるようになります。
姿勢も同様で、異なる姿勢に見えても、「形」としてみれば、同じ姿勢である場合がよくあるのです。
では改めて、胸を張る姿勢と猫背を比較してみましょう。
上は、胸を張る姿勢の模式図です。首から胸にかけて線を引いて形をわかりやすくしています。背中を見ると、やや曲がりは浅いですが、先ほどのアルファベットのL字と似ている形をしている事がわかりますね。
同様に猫背も見ていきましょう。
背中の形を示す線は、ひらがなの「く」の字の形をしています。先ほどの例を思い出して下さい。「く」の形はアルファベットのL字と同じ形でしたよね。
つまり、胸を張った姿勢と猫背は同じ背中の形なのです。
それでもまだ納得できない方の為に、今度は胸を張った姿勢の図を少し時計回りに回転させてみます。
すると、見る方向が変わった事で、背中は「L」字から「く」の字に変化したように見えます。
そして、ここでふたたび猫背と比較してみましょう。
どうでしょう。胸を張った姿勢も猫背も同じ「く」の字状の背中の形をしていますね。ここまでくれば胸を張る姿勢と猫背は同じ背中の形である事が納得して頂けたのではないでしょうか。
このような事実から、私は胸を張った姿勢を隠れ猫背とも呼んでいるのです。
猫背の人は胸を張るクセがつきやすい
このように、胸を張る姿勢と猫背は一見異なる姿勢に見えますが、実はとても似ている姿勢です。
その為、猫背の方はそうでない方より胸を張るクセがつきやすい傾向があります。何故なら猫背の方は、そうでない方より自然に胸を張る事ができるからです。
これはある意味当然です。猫背と胸を張った姿勢は背中の形が同一だからです。その為、猫背の方が胸を張ってもからだに無理がほとんどかかりません。
つまりこれは、子供の頃に猫背になり、それを気に病み姿勢を正そうとして胸を張ってみたら、意外にからだに無理がなくいつのまにか習慣になっていた、というのが理由ではないでしょうか。
このような方の多くは、最終的に胸を張った状態のまま固まった「胸つき出し姿勢」になってしまいます。
そしてさらに、この逆のケースの場合もあります。
つまり、胸を張る習慣のある方が、なんらかの原因により突然猫背になってしまう場合もあるのです。
典型的に見られるケースでは、高齢になり筋力が落ちた為にからだが前傾して「L」から「く」の字の背中になり、猫背になってしまうケースです。これは高齢の女性によくみられます。
このように、猫背と胸を張る姿勢は、その類似性からお互いにいったりきたりする傾向があります。その為、胸を張るクセのある方には「自分は姿勢が悪いのではないか」という不安を抱え続けている場合がよくあるのです。
このような悪循環から逃れるには、胸を張るクセを改善して、本来の正しい姿勢である「背すじの伸びた姿勢」に矯正するしかありません。
まとめ
胸を張る姿勢がなぜ「隠れ猫背」なのかご理解いただけたでしょうか。
猫背を正そうと胸を張るよう頑張っていたけれど、背中のかたちは何も変わってなかったのか・・・悲しい。
みなさんも気を付けましょう。
最後にポイントをまとめます。
- 胸を張った姿勢の背中の形はアルファベットのL字に似ている。
- 猫背の背中の形は、ひらがなの「く」の字。
- 「く」と「L」は同じ形だから、実は胸を張った姿勢と猫背は同じ背中のかたち。
- 胸を張る姿勢はその特性から「隠れ猫背」とも言える。
- 猫背の方ほど胸を張る習慣が身につきやすい傾向がある。