ここでは効率のよい矯正を行う為の必須知識、「矯正の二つの要素」について解説します。
なんか難しいそうなんだけど。。。。
簡単にいえば、矯正を「からだ」と「意識」の要素に分けて考えると、効率のよい矯正ができる、という話です。
姿勢を矯正するには一定の期間が必要です。少なくとも数ヵ月の時間がかかりますから、できるだけ効率的に行いたいものです。そして、その為の必須知識が、「矯正の二つの要素」です。
一旦悪い姿勢になると元の姿勢に自然に戻らないのは、からだが硬く固まっている事が原因です。しかし、だからと言って、からだをただ柔らかくしただけでは姿勢は矯正されません。
姿勢矯正をするには、姿勢を正す動作と感覚を覚える必要があります。つまり「意識」も変えないといけないのです。
ここでは、この姿勢矯正の二つの要素、「からだ」と「意識」について少し詳しく解説します。この二つの要素を意識して矯正を行うと矯正の効率がぐんと上がりますから、興味のある方はしっかりチェックしておきましょう。
矯正の「からだ」の要素
まずは、からだの要素についてです。悪い姿勢になるとからだは変形します。変形した状態が長く続くと、その形に合わせて徐々にからだは硬くなります。一度硬くなってしまったら、再びからだを柔らかくしないと姿勢を正す事は出来ません。
この硬くなったからだを柔らかくする事を、姿勢矯正における「からだ」の要素と言います。
多くの方のイメージする姿勢矯正とは、まさにこのからだの要素の事だと思います。
しかし、先も述べたのように体をただ柔らかくしただけでは、姿勢は矯正されません。もう一つの「意識の要素」が必要となるからです。
矯正の「意識」の要素の重要性
そして、もう一つが「意識」の要素です。意識の要素とは前述したように、姿勢を正す動作と感覚を覚える事です。
しかし、多くの方は、意識の要素と言われてもピンとこないでしょうし、それが本当に必要なのか疑問を抱く方も多いでしょう。
しかし私自身は、むしろ「からだ」より「意識」の要素の方が矯正において重要だと考えてます。
意識の要素について多くの方がピンとこないのは、「意識をすれば誰でも姿勢は正せる」と無意識に考えているからではないかと思います。又は「姿勢を正すには胸を張ればよい」と単純に考えているのかもしれません。
しかし、これが多きな間違いなのです。まずは下の画像をご覧下さい。
上の画像は、正しい姿勢(グレー)と悪い姿勢(うすい緑)を重ねたものです。2つの姿勢の形の違いが画像からよくわかりますね。画像から、形の異なる部位は背中だけではなく全身にある事がわかります。
もちろん、このような姿勢を正す動作は、本来自然に身についているものであり、通常はわざわざ学習するものではありません。
しかし、長期間悪い姿勢でいると、その悪い姿勢を自然な姿勢だと体は誤認識してしまいます。そうなると、本来身に付いていたはずの姿勢を正す動作を根本から忘れてしまうのです。
もちろん姿勢を正す動作がわからなければ、いくらからだを柔らかくしても姿勢は矯正されません。実際、私の治療室でも、矯正に時間のかかった方の多くは、姿勢を正す動作を覚える事にてこずった事が原因である場合が多いのです。
正しい姿勢を悪い姿勢と感じてしまう
悪い姿勢を自然な姿勢だとからだが誤認識するようになる問題は、姿勢矯正をする時に別の問題も引き起こします。
それは、正しい姿勢を逆に悪い姿勢だと感じてしまう問題です。
例えば長期間猫背であった方は、その猫背を正しい姿勢だと誤認識しています。
つまり、丸い背中を正常な背中として認識している為、矯正の為に背中を伸ばそうとすると、それを異常な姿勢だと認識して、強い違和感を感じてしまう場合があるのです。
とはいえ、猫背の方の場合は、よほど長期間悪い姿勢でない限り、このような問題は生じません。
しかし、必ずと言っていいほどこの問題に突き当たってしまう姿勢があります。それは胸つき出し姿勢の方です。
胸つき出し姿勢とは、胸を張る事がクセになり、胸を張ったまま固まった姿勢です。
胸を張ると、確かに見た目はよくなります。しかし、これは背すじが伸びたからではありません。
胸を張る動作とは「胸を上に突き上げる」動作です。胸が上につきあがると、からだの見え方が大きく変化して、見た目だけ良い姿勢になるのですが、からだにかかる負担はむしろ大きくなる為、様々な症状の原因にもなっています。
このあたりの詳しい解説は以下の記事を参考にしてください。
このように胸を張った姿勢のまま長期間過ごすと、胸を張った状態を「背すじの伸びた姿勢」だとからだは誤認識するようになります。
その為、実際に背すじを伸ばすよう動作すると、逆に背中を丸めたような感覚に陥ってしまい、その違和感の為に矯正が進まない場合がよくあるのです。
その為、胸を張るクセのある方は、他の姿勢の方より意識の要素を重視して姿勢矯正を行う必要があるのです。
からだと意識どちらに重点をおくか
以上のような事から、効率的な姿勢矯正をするには、矯正を「からだの要素」と「意識の要素」に分けて取り組む必要があります。
しかし、矯正を始める前から、どちらの要素がより必要なのかを判別するのはなかなか困難です。
もし、正しい姿勢の感覚がからだに残っているならば、意識の要素を特に気にしなくとも姿勢は矯正されでしょう。このようなケースは悪い姿勢であった期間が数年内の方に多くみられます。
一方、いくらからだを柔らかくしても、一向に姿勢が矯正されない場合、すでに正しい姿勢の感覚をからだは失っている可能性が高いですから、意識の要素に重点をおいて矯正を行う必要があります。このようなケースは、悪い姿勢であった期間が長い方や胸を張るクセのある方に多く見られます。
このように、最初はからだを柔らかくする事に重点をおいて矯正を初めて、その後の進展具合から、意識の要素に重点を移すかどうか判断するようにしましょう。
意識の矯正にはエクササイズが必須
意識の要素が重要なのはわかったけど、矯正するには具体的に何をすればいいの?
確かにわかりずらいですね。次はそれを解説しましょう。
意識の要素、つまり正しい姿勢の動作や意識は、どうすれば学習できるのでしょうか。
姿勢矯正の方法は大別して装具(猫背矯正ベルトなど)・治療・エクササイズの三つがあります。以下の表はそれぞれの矯正法の要素別効果を示したものです。
要素 | 装具 | 治療(施術) | エクササイズ |
---|---|---|---|
意識の要素への効果 | × | × | ○ |
からだの要素への効果 | △ | ○ | △ |
表の×は効果はないという事。△は多少の効果はある、○は効果の高い事を示しています。この表を見てもわかる通り、意識の要素に効果のある方法はエクササイズだけです。
つまり、正しい姿勢の動作や意識は、エクササイズをする事でしか学習できないのです。
これは考えてみれば当たり前で、動作を覚えるには、実際に体を動かすしか方法はありません。
ちなみに、このホームページで紹介しているエクササイズは、姿勢を正す動作学習の要素がバランスよく含まれていますのでお勧めです。
姿勢矯正はスポーツを習得する事と同じ
はい、ここまで矯正の二つの要素について解説しましたが、どうでしてたか?
うーん理屈はわかったけど、やっぱり意識の要素についてはわかりずらいね。
そのような時は、姿勢矯正はスポーツを覚える事と同じだと考えるよいでしょう。
このように矯正を二つの要素に分けて考えると、姿勢矯正はスポーツを覚える事とよく似ている事に気づきます。
姿勢矯正をスポーツに例えると、からだの要素は筋力アップなどの体力づくり。意識の要素は技術の習得に例えられます。
姿勢矯正で忘れていはいけない事は、姿勢の問題はからだの問題である、という事です。当たり前だと思う方もいるかもしれませんが、一般の方はそうは考えていません。多くの方は、姿勢を「態度の問題」だと無意識に考えているからです。
この事は、姿勢の悪い方が頻繁に言われているであろう「姿勢を正しなさい」という言葉によく表れています。
この指摘を野球で例えれば、打てない選手に「根性で打て」とだけ言っている事と同じです。もちろん、選手が打てなくなる理由の大半は根性(態度)の問題ではなく、からだの問題です。ですから、からだをどのように鍛えて動かすかを具体的に指導しなければ、打率は上がらないでしょう。
これと姿勢も同様です。姿勢をからだの問題としてしっかりとらえて、どのようにからだを変化させて、どのように動作させるのかを客観的に考えなければ、矯正は成功しません。
なるほど、意識の要素をスポーツの技術を覚える事と同じだと考えるとしっくりくるね。
矯正にエクササイズが必須である理由もわかりますよね。
まとめ
最後にポイントをまとめます。
- 姿勢矯正をからだの要素と意識の要素にわけて考えると効率のよい矯正ができる。
- からだの要素とは、硬くなったからだを柔らかくする事。
- 意識の要素とは、正しい姿勢になる動作を学習する事。
- 悪い姿勢であった期間が長い方や胸を張るクセのある方は、意識の要素が重要になる場合が多い。
- 最初はからだを柔らかくする事から矯正を始めて、その後、正しい姿勢になる動作学習が必要そうなら重点的に行うのが効率的。
- 姿勢矯正をスポーツと同一だと考えると、二つに要素分けする理由が理解しやすい。